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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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 クラウディアは、今週はA市の劇場に出ていることが分かった。わたしはクラウディアのいる劇場に車を飛ばした。彼女のステージの時では、他人の目もあるから内密な話は出来ない。しかたなく、彼女を指名して、プライベートの個室に呼んだ。

 クラウディアは、個室に入ってきて、わたしの顔を見るなり、「お久しぶりね」と言った。実は、半年ほど前、エバとギクシャクしたとき、渋谷で彼女に偶然出会った。商売熱心な彼女は、わたしをホテルに誘った。

 エバとの関係が悪化して、むしゃくしゃしていたのでわたしは彼女の誘いに応じた。ことが終わったあと、元気のないわたしにクラウディアは理由を尋ねた。エバと彼女が親しいことを知っていたわたしは、エバの名前は出さずに、「恋人とうまくいってないんだ」と告白した。

 クラウディアは、わたしに「どうしてセパレートしたの。あなた、彼女にプレゼントしてないの」と尋ねた。わたしは「すこしだけどね」と答えた。ほとんどしていないとは言えなかった。彼女たちの常識からすれば、わたしのような付き合いをしていれば、「あなた、ケチだから彼女が逃げるのは当たり前よ」と言われかねなかったからだ。

 わたしとしては、「ケチ」と「金がない」とは違うと思っている。出来る精一杯のことはしたと思っていた。だが、金を稼ぎに来ている彼女たちにとっては、貢がれた金の総額が愛情だと思っている。貯金通帳の残高を見せて、何度も説明してもエバは納得しなかった。だから半分、もういいやと思っていたことも確かだった。

 それ以来、クラウディアはわたしをディスコなどで見かけるたびに「あなたの恋人はどうなっているの」と、からかい半分に声をかけてきた。わたしはその度に、「まあまあだ」と口を濁していた。もちろん、エバと仲がいいということは知っていたから、一度も交渉は持たなかった。

 コンドームを用意しようとしたクラウディアを制してわたしは言った。

「違う、違う。今日は大事な話があって来たんだ。エバが捕まったんだって」

「そう」

「実は、俺は前にエバの恋人だったんだ」

「ほんと」

「そう。今はセパレートしている。エバはどこで捕まったの」

「空港」

「どこの」

「分からない」

「もうラストだから、一度会いに行こうと思ったんだけど…。でも、いま彼女には恋人いるんだろ」

「Kのパパのこと? でも、彼女は愛してない。お金だけの関係。あなた助けてあげて」

 クラウディアがはっきり「金だけの関係」と言ってくれたことで、少しホッとした。ちゃんとした恋人がいるのなら、わたしの出る幕ではない。彼女を探さず、そのままにしておこうと思っていたのだ。

「でも、どこにいるのか分からないと…」

「わたしもあちこち聞いてみるわ。だからあなたの電話番号教えて。何か分かったら、電話するから」

「でも、俺はあさってから日本にいないんだ。仕事で。だから、明日までに分からないと間に合わないかもしれない」

「分かったら、今晩でも電話するから」

「オーケー。お願い」

 お互いの携帯番号を交換して、わたしは家に帰った。とにかく、翌朝は十条の入管に行ってみようと思った。入管はおそらく九時からだろう。もし十条にいなかったら、次の手を打たなくてはいけない。朝一番に行こうと思って早く床についたのだが、疲れているのになかなか眠れない。胸が締め付けられるような感じなのだ。

 来るものが来たという気持ちだった。「もう勝手にしろ」と言って別れたエバだったが、いざ捕まって、もう二度と会えないかもしれないとなると、どうしても会いたくなった。だが、普通だったらなんとかなると思ったが、残された日は一日しかないのだ。エバと過ごしたこの一年半の思い出が頭をよぎった。


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フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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