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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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 飛行機がネイバ空港に降り立ち、タラップが横付けされた。客たちがみんな立ち上がったとき、先ほどの男が立ち去り際にエバの耳元にに何やら囁きながら、彼女の手の上に手を置いた。エバはニコッと笑っていただけだった。

「こいつ、また八方美人をやっているな、やっぱりコロンビアーナにはコロンビアーノが一番なのか」

 と思った。

 ネイバは小さな空港なので、手荷物だけのわたしたちはすんなり外に出た。ここからはバスでサンアグスティンまではバスで行くつもりだった。時間は朝の八時半だった。バスの出発時間やバスターミナルの場所を確認しなくてはならない。わたしはエバに観光案内所に行って聞いてくれと頼んだ。彼女は、空港内にある案内カウンターの女性に聞きに行った。

 すぐに戻ってきた彼女は、こう言った。

「サンアグスティンまでね、バスで五時間かかる。タクシーだと三時間半か四時間。バスは一万五千ペソ。タクシーだと六万ペソだって。あなた、どうする」

 バスだと二人分で三万ペソ。タクシーの半分だ。といっても、距離にしたら三百キロくらいある距離を六万ペソ(約六千円)なら安いものだと思った。それに、タクシーなら、トイレに行きたくなったのを我慢したりしなくてもいいだろう。わたしは即座にタクシーに決めた。

 空港の出口をくぐると、数人の客待ちしている運転手が、わたしたちに「タクシー?」「タクシー?」と言いながら寄ってきた。その中の、スティーブ・マックイーン似のアングロ・サクソン系の顔をした中年運転手に、「サンアグスティンまで、いくらだ」と聞いた。運転手は「八万ペソ」と答えた。観光案内所で聞いた六万ペソとは二万ペソの開きがある。吹っかけているな、と思ったので、なめられないように「七万ペソだ」とわたしが言うと、「オーケーだ」とあっさり彼は言った。

 六万ペソから交渉しようと思ったのだが、片道三百キロだから、もし帰りに客が拾えなければ六百キロになる。日本だったら、ガソリン代だけでも足りないくらいの金額だ。いくらガソリンが日本より安いといっても、日本の十分の一ということはない。せいぜい半分か三分の一くらいだ。あまり可哀想なので、「七万ペソ」と言ってしまったのだ。しかし、運転手にしてみれば、物価の安いネイバ市内でしこしこ客を拾っている一週間分くらいの売り上げになるから了承したのだろうと、あとになって思った。

 荷物は念のため、トランクには入れずに手で抱えて車に乗りこんだ。たいして金目のものを持っていないエバのリュックは助手席に置いた。何かトラブルが起こって、運転手が荷物を積み込んだまま走り去ってしまう危険性も考慮したのだ。


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出町柳次
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フリーライター
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自己紹介:
フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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