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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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エバのアパートは、ノルテという地区にあった。ボゴタは人口五百万人の大都市だ。コロンビアでは、どの町でも「セントロ」(中心)という地区があり、文字どおりそこが町の中心街なのだが、ボゴタの場合は「ノルテ」(北)と呼ばれる地区が、東京の山の手のような高級住宅地となっていた。逆に「スール」(南)と呼ばれる地域はスラムがある貧しい人たちの住む地域だった。

タクシーは、そのノルテの高級マンションばかりが立ち並ぶ地域に入って行き、ある九階建てのマンション前で停まった。エバに促されて、車を降りた。エバに「いくらだ」と聞くと、「一万ペソ」と言って、わたしの財布から一万ペソ札を抜き取って運転手に渡した。

一万ペソは、日本円で約千円だった。コロンビアで初めて支払う金額なので、この額が妥当なものなのか、ぼられているのか皆目見当がつかなかった。しかし、現地人のエバが納得しているので、相場なのだろうと思って払った。

マンションの玄関の前に立つと、中にいたホテルのドアボーイのような制服を着た二十代の青年がドアを開けてくれた。何度か日本からエバに電話したとき、応対してくれたのは彼なのだろうか。

管理人というから、日本の感覚で、六十過ぎの定年退職した老人がやっているものばかりと思っていた。ところが働き盛りの青年だったのだ。

エバは彼に郵便物やメッセージがないか彼に確かめ、わたしをエレベーターに促した。

エレベーターは六階で停まった。彼女の部屋は、エレベーターの真向かいにあった。左右にもう一つずつ部屋があった。ワンフロアーに、部屋が三つずつあるマンションだった。

エバはバッグから鍵を取り出し、上下二つの鍵を開けた。ドロボウ避けのため、二重ロックになっているらしい。世界一安全な国日本では、鍵は一つなのが当たり前だが、以前テレビで鍵師が「鍵は二つ付けて鍵と言えるんです。一つだけならプロはあっという間に開けられる」と言っていた。ドアボーイといい、二重ロックといい、世界で最も危険な国の最右翼に挙げられるコロンビアの高級マンションでは当然なことなのだろう。


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フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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