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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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 コロンビア第三の都市で、マイアミ、ニューヨークなどを結ぶ国際線が発着しているだけあって、カリの空港はさすがに大きかった。預けている荷物はないので、すんなりとゲートを通過し、タクシー乗り場に向かった。ネイバからカリまで二時間もかかったため、もう夕暮れになっていた。

 客待ちしていたタクシーに乗り、エバのお姉さんが住んでいるパルミラに向かった。カリ空港(正式にはパルマセカ国際空港)は、正確にはカリとパルミラの中間に位置していて、どちらにも車で二十分くらいの距離である。タクシーはすぐに幹線道路に入った。郊外にあるため、幹線道路といっても両脇はずっと農園になっている。

 かなり暗くなってきて、タクシーはヘッドライトを点けた。

「リュージ。わたし、ここに三人のお姉さんがいる。これから三人のお姉さんのうちに行く。でも、そのうちの一人のお姉さんと、わたし、喧嘩してる。だから、あなた、わたしと一緒できない。あなた、ホテルで待ってる。オーケー?」

「分かってるよ」

 幼くして母親に死なれたエバは、お姉さんたちに育ててもらったようなものだった。だから、日本にいるとき、自分の口座に送金するだけでなく、お姉さんたちにも少なくない金を送金していた。中でも一番貧しいお姉さんには、百万円の家を買い、そこに住まわせてやった。ただ、それは自分名義で家を買い、タダで住まわせてあげるという約束だったが、強制送還されてみると、家はエバ名義ではなくお姉さん名義になっていた。それで、「名義をわたしに戻せ」「いやわたしのものだ」という喧嘩になっていたのだ。

 わたしがコロンビアに来る一ヶ月前、エバに何度電話しても、連絡が取れないことが二週間くらい続いた。管理人の男は「パルミラに行っている」と言うだけで、いつ帰ってくるのか分からなかった。今回、エバがパルミラに行く気になったのは、わたしを案内するだけでなく、そのお姉さんと最後の直談判をするつもりだったのだ。

 わたしとしては、そんな修羅場に居合わせたくない。まがり間違えば、刃傷沙汰になってしまうかもしれなかったからだ。一人でホテルにいるのは心細かったが、日本人のわたしがいれば、よけい話がこじれる可能性もあったので、おとなしくホテルで待つことにした。


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出町柳次
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フリーライター
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自己紹介:
フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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