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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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「ちょっと、海行く。あなたも来る」

「えっ、カメラあるだろ。二人一緒は危ないよ」

「じゃ、わたしだけ行く」

「リスト!」

 エバは海の中に入って、寝転がっている。わたしのポケットカメラで彼女を撮った。いい表情だった。本当にリラックスしているのだろう。

「わたしのカメラでも撮って」

「分かった」

 積極的に自分から撮ってくれというのは、彼女にしては珍しかった。わたしは彼女のカメラに切り替えて何枚も撮った。

「リュージ、あなたも、ここ来る。リラックス」

「ダメ」

 わたしは海水パンツのポケットに札束を突っ込んでいた。これが日本やアメリカなら、コインだけで用が足りるのだが、インフレの進んだコロンビアではコインだけでは何も買えない。カメラのことも心配だったが、札束を濡らすわけにはいかないので、海に浸かりたくても出来なかった。

 十分ほどでエバが戻ってきた。ビーチには、まだほとんど人は出ていなかった。相変わらず押し売りたちが右から左へ、左から右へと行き交っていた。ひととおり押し売りには断ったので、あまりしつこくなくなっていた。声はかけてくるものの、首を振るだけで、「もうこいつらは買う気がない」と諦めてくれた。

「リュージ、行く?」

「行こう」

 ビーチには一時間ほどいただけで、わたしたちはホテルに引き上げた。ビーチからホテルに戻る路上で、最初に声をかけてきた三つ編み屋の女性二人とすれ違った。そのうちのひとりから、エバが何か言われた。

「何を言われたの」と聞くと、「彼女、わたしの三つ編みを見て、怒ってた。自分が行ったときは断ったのに、どうしてほかの女にはやらせたんだって」と言った。客を取られた腹いせを、エバ本人にぶつけたのだ。


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出町柳次
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フリーライター
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フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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