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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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 満腹し、勘定を済ませて店を出た。エバはアパートに戻るつもりのようだ。レストランの数十メートル先に、薬屋があった。わたしは足を止め、エバに言った。

「エバ、ちょっとここでメディシーナ(薬)買いたい。寝る薬。あと頭痛いの薬」

「オーケー。ちょっと聞いてみる」

  時差ぼけで、頭がまだボーッとしていた。今日の夜はぐっすり寝て、頭をすっきりさせたかったのだ。日本から持参した睡眠薬は、正確に言えば睡眠薬ではなくて、導眠剤だった。いわば眠るきっかけを与えてくれるだけで、薬としては弱いもので、しかも四時間くらいしか効かない。数も残り少なかったし、コロンビアの薬がどんなものか試したい気持ちがあったのだ。もちろん、街の薬屋で買うのだから合法的なものである。

  エバが店のおばちゃんと二言、三言話した。するとおばちゃんが二種類の薬を差し出した。

「リュージ、これ、頭痛いの薬。あと、これ眠る薬。でも、これ強いから一つだけ買うできる。危ないかもしれないからね」

  頭痛の薬は錠剤だったが、睡眠薬はカプセルで一箱に十個入っていた。

「オーケー。いくら」

「頭痛いの薬は千ペソ。眠る薬は二万ペソ」

  二万と聞いて、「エッ」と驚いた。よく考えれば二千円程度なのだが、コロンビアの物価から考えると相当高い。ちゃんと印刷された市販用の箱に入っているものだから、ヤミのものではないだろうが、外人だと思って吹っかけられたのだろうか。ともかくモノは試しと買ってみることにした。

  薬屋の二軒先の角を曲がると、エバのいるマンションの通りだった。エバの姿を見つけると、ボーイがドアを開けてくれた。朝とは違い、黒人の血が入っているらしい男だった。例によってエバは郵便物をチェックし、エレベーターの前に立った。

「リュージ、これ見て。わたし、イタリアのお姉さんからコレクトコールかかってきた。長い長い話した。だから、これだけ今月電話のお金払う。でも、お金ない」

  エレベーターの向かい側に住民に対するものと思われる張り紙がしてあった。それにはエバの部屋番号のところに何やら数字が書いてあった。数えてみると、二十万ちょっとだ。エバは暗にわたしに払ってもらいたそうな口振りだったが、「ふーん」と言って気づかないふりをした。

  わたしに電話した金ならともかく、どうして彼女のお姉さん、しかも金に困っているわけでもないサリーとの電話代をわたしが進んで払わなくてはならないのだと思ったからである。


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フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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