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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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  カルタヘナにいる片山氏から電話があった。すると、片山氏が開口一番、こんなことを言った。

「出町さん。ビッキーのところなんかにいないで、明日にでもこっちにおいでよ。ワイフに聞いたんだけど、ビッキーにはいまコロンビアーノの恋人がいるんだってよ。結婚するつもりだって。ワイフには、出町さんのことは『二、三日は面倒見るけど、あとはカルタヘナにやる。もう彼のことは愛してない』と言ってたらしいよ」

「はい。恋人のことは聞いてます。でも、まだこっちで少し用があるので、もうしばらくいます。そっちに行くときは連絡します」

  わたしはかっこ悪くて、その場を取り繕った。やっぱりエバには恋人がいたのだ。「友だちはいるけど、恋人はいない」と言っていたのは嘘だった。だから様子がおかしかったのだ。

  電話を切ると、エバが「何の話?」と尋ねた。わたしはむかつきながら、「エバには恋人がいるって。だから、ここにいるな。明日、カルタヘナに来いってさ」と言った。

「たぶん、そうだと思った。でも、それじゃわたしが悪いみたいじゃない」

  エバはむくれながら言った。わたしは追求の手をゆるめなかった。

「恋人はいないって言ってただろ。もしいるんだったら、わたしはコロンビアには来なかった」

「……」

「セックスしてないってのもウソだろ。お前の言ってること、みんなウソだ」

「ノー。セックスしてない。それ本当。彼、ここに来る。ミュージック聴く、話する、それだけ」

「ウソつき。部屋に来てセックスしないなんてあるか。好きだったら、どうしてセックスしないんだ」

「わたし、日本でいっぱいセックスした。いま、セックスする、日本での仕事思い出す。だから、セックスいらない」

「彼とはどのくらい付き合ってるんだ」

「一ヶ月」

「一ヶ月?  それでセックスしてないのか」

「そう。早くセックスすると、軽い女だと思われるから」

「結婚するつもりか」

「分からない。でもたぶんする」

「彼は、おまえが日本に行ってたのを知ってるのか」

「もちろん、知らない」

「知らない?  いままでのことどう説明してるんだ。結婚してうまくいくと思っているのか。このマンションはどうして買ったのか、怪しまれるだろ」

「お父さんがお金持ちで、その遺産で買ったと言ってる」

「そんなの信じると思っているのか」

「大丈夫」


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「エバ、前に新宿の焼き肉屋で言ったことがあるだろ。日本も昔は貧乏だった。八十年、九十年前ね。そのころはフィリピンやマレーシアより貧乏だった。だから、日本の九州の女、フィリピンやマレーシアに行った。あなたたちと同じ、プータ(売春婦)の仕事。“からゆきさん”と言った。映画にもなってるよ。『サンダカン八番娼館』という映画。でも、日本人の男はそのお金で機械買った。それで仕事、一生懸命した。だから、だんだん日本は豊かになった。でも、コロンビアの男は怠け者。それ、だめ。分かる?」

「……分かる」

“からゆきさん”たちの送金が日本を豊かにしたというのは、いかにも乱暴な話だ。自分でも分かっていた。戦後の復興などは“朝鮮戦争特需”などが寄与しただろうし、もともと江戸時代からの儒教の影響による日本人の勤勉さも大きな要素をしめているだろう。からゆきさんたちが日本に送った金は、現在のコロンビアと同じように、家族に食い散らかされてしまっただけかもしれない。

  コロンビアでも、女たちからの送金で、そのファミリーは住居や食料には困らなくなったろう。だが、それにとどまっている。わたしは彼女たちが体を張って稼いだ金を、コロンビアーノたちが空費しているのに我慢がならなかった。だから、あえて誇張して言ったのだ。

  しかし、コロンビアはコカインマフィアが人気の国だ。政府が無策無能なのに対して、コカインマフィアはアメリカなどへコカインを密輸して得た金の一部で住宅や学校を建て、貧しい人たちに提供している。

「日本のマフィアは女から金取るだけ。コロンビアのマフィア、プレゼントしてくれる。悪くない」。

  こんな話を何人のコロンビアーナから聞いたことか。

  結局、「金を持っているやつが、持っていないやつに分け与えることはいいことだ」という「キリスト教的世界観」が彼らの根底にあるのだろうか。だから、それが大義名分となって、売春でだろうが何によってであれ、「金持ち」の日本人から金をふんだくることに抵抗がないのだろうか。

  エバには、彼女が日本にいるとき、何度も日本人すべてが金持ちではないと説明した。

「日本のサラリー、高い。でもアパートも高い。食べ物も高い。何でも高い。だから、日本人の普通の男、自分のお金、一ヶ月に五万円くらいだよ。それで、どうしていっぱい遊びできる?  どうしていっぱいプレゼントできる?」

「でも、日本、お金持ち。わたし、日本のあちこち行った。どこもきれい。コロンビアと違う」

「そんなことない。エバが行ったのは、日本でも一部だけ。あなた全部見てない。日本でも、田舎に行けばトイレが水洗じゃないところもある。わたしの家だって、高校生のときまで水洗じゃなかった。トイレ、ものすごく臭かった」

  たしかにエバは、けっこう片田舎のスナックにも仕事で行ったことがある。それで日本のすべてを知った気になっているのだ。だが、日本の地方都市が同質化してきたのは、せいぜい十五年くらい前だろう。

  また、彼女が知っている日本人は、彼女の「お客さん」だけである。遊ぶつもりで来ているのだから金離れはいいのも当然だ。しかし、大多数のサラリーマンは、仕事が終われば家庭に真っ直ぐ帰るか、居酒屋でちょっと一杯やるのが関の山だ。そういう大多数の日本人を彼女は知らない。

  わたしはコロンビアから帰ったあと、映画「サンダカン八番娼館」のビデオをダビングし、エバのもとへ送った。日本だって、かつては現在のコロンビア以上に悲惨な状態だったということを本当に理解してもらいたかったからだ。

  だが、しばらくしてエバのところに電話して、ビデオを見たかと聞くと「日本語、分からない」の一言で片づけられてしまった。はなから見るつもりはなかったのだろう。彼女にとって、過去の日本が貧しかったことはどうでもよく、金があふれているように見える現在の日本だけが重要なのだ。


  リリアナと彼女の娘のメリーと記念写真を撮ったあと、エバと二人で大通りに出た。

「ここ、タクシー来ない。だから、バスで途中まで行く。あとでタクシー。オーケー?」

   エバの指示に従い、バスの来るのを待った。人通りはほとんどない。タクシーが通りかかったら拾おうと思ったが、一台も通らない。ノルテといえども郊外だから、流しのタクシーなどめったに来ないのだ。

  十分ほど待っていると、ようやく一台のバスが来た。タクシーが拾えるところまで行けばいいのだから、どんなバスでもよかったのだが、運よくエバがいつも使っているバスが来た。

  十五分ほど走ると、終点のショッピングモールに着いた。買い物をしたショッピングモールとは別のところである。

「ここよ、ここでタクシーに乗る」

  エバに促されて、つけていたタクシーに乗った。エバが番地を運転手に告げた。今度は男の運転手である。ボゴタは東西の通りと南北の通りが基本的には交差して成り立っている。だから、「何番通りと何番通りの交差点」と言えば、その地点まではたいてい迷わず行ける。運転手は無言で車を走らせた。

  エバの部屋に戻ったあと、わたしは彼女に聞いた。

「エバ、旦那さんはどうしてどこかに行っちゃったの」

「知らない」

「本当に彼は何も仕事してないの」

「そう」

「どうして。仕事がないといっても、なんかあるだろ」

「……。あなた、コロンビアに来て、なに感じた?」

「コロンビア、何でもある。道も広いし、コーヒーやエメラルドもある。本当は貧乏じゃない。男がみんな怠け者だからじゃないのか」

「わたしもそう思う」

「リリアナの旦那だって、おまえがお金を援助するから、その金を当てにして、働かないんだろ。おまえがお姉さんのファミリーを駄目にしてるんじゃないのか」

「たぶん、そう。でも、それがコロンビアスタイル」

  エバははっきりと言いきった。エバはすべてを分かっていて、それでもお姉さんたちに体を売って得た金で援助していたのだ。

  リリアナの旦那はピンピンしていた。身体障害者ではない。三十歳代の働き盛りだ。いくら仕事がないといっても、肉体労働でも探せば何かあるだろう。赤ん坊を抱えた女房にばかり働かせていないで、少しは家計の足しになることをすればいいのだ。

  おそらく、以前はちゃんと働いていたのだと思う。だが、女房の妹が日本に行き、コロンビアでは考えられないほどの大金を稼いできた。ときどき自分が汗水たらして稼いだ以上の金を援助してくれる。それでばからしくて働かなくなったのではないか。


  リリアナは、わたしにこれからコロンビアのどこに行くつもりなのかと尋ねた。わたしは「エバたちの両親の墓があるというバランカメルヘハに行きたい」と言った。リリアナと旦那は、口を揃えて「危ないからよした方がいい。わたしたちでも何年も行ってない」と言った。

  地図を見てると、州都ではないにしても、一応都市にはなっている。少なくとも三、四万人くらいの人口はあるだろう。ゲリラが出没するという、山岳地帯ならともかく、そんな街でも「危ない」と言われるのだ。とんでもないところに来てしまったというきになった。

「それならサンアングスティンに行きたい」とわたしは言った。サンアングスティンは、「地球の歩き方」によれば、インディオたちがコロンブスの征服以前に作っていた石像文化のある古代遺跡の町である。石像といっても、紹介されている写真を見ると、イースターのような人の顔をモデルにした巨石文化ではなく、猿などの動物や人の顔を形取ったりした小さな石像が数百もあるらしい。

「サンアングスティン?  あそこも危ないよ。どうしても行きたいのなら、わたしが付いていってやろうか」

  リリアナの旦那が言った。わたしとエバは、顔を見合わせ「考えてみる」と言った。リリアナの旦那が付いてきたら、それだけ旅費もかかる。それにエバだって、弟か兄ならともかく、いくら義理の兄とはいえ血の繋がっていない男とわたしの三人で行くのは嫌なのだろう。

  しばらく雑談していて気が付くと、リリアナの旦那がいなくなっていた。

  エバに「お姉さんのハズバンド、どこにいったの」と聞くと、「外に遊びに行った」と言う。

「彼は何の仕事してるの」

「何もしてない。仕事ない」

  リリアナにとってわたしは妹の大切な「恩人」のはずだ。だが、彼にとっては、自分の国の女を金で買いあさっているスケベな日本人の一人にすぎないのかもしれない。腹の中ではそう思っていても、わたしたちの前ではあからさまにはできない。それで逃げ出してしまったような気がした。とうとう彼は、わたしたちが辞去するまでアパートに帰ってこなかった。

  三十分ほどして、エバがアパートに帰ろうと言い出した。十時をすぎていたから、ちょうどいい頃合いだった。だが、その前にエバがお姉さんのために買い物をすると言って、団地の中にある食料品店に連れて行かれた。コンビニよりも小さい店だが、コーラなどの飲料水から肉類まで、一応の食料は揃っていた。

  エバは一人で牛乳や卵、マサパンというコロンビア風パンを作る小麦粉など次々とかごに詰めていった。結局、この料金もわたしが支払わされた。一万六千ペソくらいのものだったが、どうしてここまで払わされるのかという気になった。

 


 タクシーはどんどん人気のない地区に入っていった。メインストリートらしく、片道三車線ほどあるが、すれ違う車はまばらだ。二十分ほど走ったあと、団地らしき建物が立ち並んでいる地区で止まった。

  エバが「ここよ」と言った。タクシーの料金は四千ペソ(約四百円)ほどだ。女性ドライバーらしく、メーター通りの料金だった。彼女は、これで仕事を上がるのだろう。

  エバのお姉さん、リリアナの住んでいるのは、日本で言えば市営住宅、都営住宅みたいなところだった。建物は三階建て、築十五年くらい。高層住宅が立ち並ぶ日本の公団のようにはきちんと整備はされていないが、建物と建物の間には植木などもある。コロンビアでは恵まれた方なのではないか。

  リリアナのアパートは、そのうちのある建物の一階にあった。玄関の呼び鈴を押すと、黒髪の三十歳くらいの女性と七歳くらいの女の子が出てきて、わたしとエバを笑顔で招き入れてくれた。リリアナは、エバよりインディオの血が少し濃いように思えた。

「はじめまして、リュージです」

  と、拙いスペイン語で挨拶すると「ようこそ」とリリアナは言った。傍らに旦那らしい三十過ぎの男が所在なげにうろうろしていた。わたしは彼にも挨拶し、コロンビア流に握手をした。

  エバがお土産のエンパナーダスをリリアナに渡し、話をしている間に、わたしはリュックからジョニ黒やタバコ、Tシャツなどの土産を出してリリアナに渡した。日本髪を結った女の子の絵柄のTシャツは、リリアナの娘、メリーに直接渡した。彼女はニコッと笑い、「グラシアス(ありがとう)」と礼を言った。

  旦那がコーラを近所から買ってきてくれたので、エバと二人で飲みながら、リリアナとエバ、わたし、旦那の四人で話し始めた。といってもわたしは満足にスペイン語が話せないので、もっぱらエバとリリアナが話しているのを聞いているだけだった。

  リリアナは「あなた、英語はしゃべれる」と英語で聞いてきた。「ア・リトゥル(少し)」と答えた。話の輪の中に入れないわたしに気を遣ったのだろう。英語が多少しゃべれるということは、彼女も高校か大学を出ているはずだ。彼女たちの父親が亡くなるまでは、学費には困らない程度の財力があったのに違いない。

  ベビーベッドには、生後五ヶ月くらいの男の赤ん坊が眠っていた。エバが「赤ちゃん、かわいそう。いま、彼、病気」と言って、喉を指差した。喘息か気管支が悪いらしい。

「だから、お姉さん、ときどき会社休む。お金ない。かわいそう」

  エバが逮捕されたとき、彼女は会社を産休で休んでいた。早産だったらしい。その影響で病弱なのだろうか。

  リリアナのアパートには電話がなかったので、リリアナの会社の信頼できる同僚に電話して、エバの消息を面会に行くたびに伝えていた。彼女は三ヶ月ほど産休を取ったあと、職場に復帰したらしい。

  アパートは、日本で言う「二DK」だった。子供がいるためか、エバの部屋ほど整理整頓はされていない。だが、テレビも冷蔵庫も、一応の電化製品はあった。エバが援助した金で買ったのだろう。

  スーパーファミコンもあった。日本に来たコロンビアーナたちは、クリスマスや誕生日などの節目に自分の子供や姪、甥たちに必ずスーパーファミコンを送っている。日本発の「文化」がこんな形で輸出されているのだ。

  部屋自体は1DKのエバの部屋と総面積は変わらないだろう。四人家族では、手狭なはずだ。「売春」という犠牲を払って新築マンションに住んでいる妹と、手狭な二DKに甘んじている姉夫婦。彼女たちは妹のことをうらやましくおもっているのだろうか。それとも腹の底では…。それが気になってならなかった。


プロフィール
HN:
出町柳次
性別:
男性
職業:
フリーライター
趣味:
ネットでナンパ
自己紹介:
フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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