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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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 二人分の切符と定番のポップコーンとコーラを買って、中に入った。入場料は正確には忘れてしまったが、日本円で一人数百円くらいだった。観客は、木曜日の夜のためか、それとも話題作ではないためか、二十人ほどいるだけだった。こんなに少ないと、逆に不良にホールドアップされないとも限らない。心配になって、エバに「危なくないか」と聞くと、「だいじょうぶ」と答えた。見まわした限りではアベックが多く、心配したほどではなさそうだった。

 だが、映画の中身がさっぱり分からない。アクション映画ならなんとかなると思ったが、この映画は心理サスペンスだった。それぐらいしか分からない。英語の字幕ならともかく、吹き替えなので、わたしのスペイン語能力では理解不可能だった。

 それでも十五分くらいはポップコーンを齧りながら、なんとか理解しようと頑張ったが、途中で猛烈な睡魔が襲ってきて、わたしはコクリコクリと居眠りしてしまった。二十分ほど経っただろうか。自分のいびきに気づいて目が覚めると、となりのエバも居眠りしていた。わたしが椅子を座りなおす音に気がついて、エバも目を覚ました。

「帰る」とエバが言った。コロンビア人の彼女にも退屈なほどの凡作だったのだろう。帰ると彼女が言うので、正直ほっとした。半分以上も残っているポップコーンをどうしようかと思案していたら、エバは「持っていく」と言うので、手に持ったまま映画館を出た。

 映画館の前でタクシーを拾い、エバのアパートにまっすぐ戻った。途中、エバがある古い建物を指差し、「あれ、テアトル。オペラの」と言った。といっても、大きなものではない。通り過ぎにチラッと見た限りでは、ミニシアターといった感じだった。ボゴタには十九世紀のころからの劇場がいくつかあるとガイドブックには書いてあった。そのうちの一つなのだろう。

「あれ、見たい」

「今度ね。わたし、今日、疲れた」

 わたしもまだ時差ぼけが完全に直らず、全身がだるい。あえて今晩無理して行く必要もなかった。

 部屋に戻ってから、二人とも早々に寝た。この夜もわたしはソファベッドで寝た。もちろん、セックスはしなかった。

 


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フリーライター
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自己紹介:
フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
新著「体験ルポ 在日外国人女性のセックス」(光文社刊)好評発売中。
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