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「リュージ。カリ行くでしょ。時間ない。早く行く」
「うん」
「エミルセもいっしょ。オーケー? わたし、カリ知らない。彼女、知ってる」
「だいじょうぶ」
ボゴタに住んでいるエバは、三人のお姉さんのいるパルミラはともかく、カリはよく知らないはずだ。しかし、パルミラに住んでいるエミルセは、隣り町のカリには詳しいはずだった。観光地を巡るのだから、エバと二人だけより、少しでも詳しい人間がいっしょのほうがよかった。
「バモス(行こう)」
エミルセの家を出て、通りでタクシーを拾おうとしたが、なかなか流しのタクシーが来ない。五分ほど待って、ようやく一台のタクシーが通りかかったので、手を挙げて停めた。三人がタクシーに乗りこんだとき、エバが「あっ」と声を出した。
「リュージ。彼女、エミルセの子供、ソニア」
エミルセの家の前には、一人の若い女性が立っていた。エミルセほどではないが、少し太っている。色も少し黒い。顔もエミルセに似ていた。
エバがソニアにいっしょにカリに行かないかと誘ったが、彼女は用があると言って断った。
タクシーが走り始めた。鼻の下に髭をたくわえた中年の運転手が、どこに行くのか尋ねた。エバが「カリまで」と言った。運転手が何やらエバに言った。
「リュージ。カリまで一万ペソ。でも、あちこち行くのなら、三時間で三万ペソでどうかって。そのほうが安いって。どうする」
カリまでは車でも三十分はかかる距離だ。一万ペソはするだろう。日本人だけなら、もっと吹っかけられたかもしれないが、現地人が二人もいる。何ヶ所か回り、空港まで行くとしたら、妥当な値段だなと思った。
「分かった。それでいいよ」
タクシーはすぐに街中を抜け、昨日通った幹線道路に入った。運転手はラジオの音楽を流しながらアクセルを踏みつづけている。流れているのは、もちろんサルサかメレンゲだ。コロンビアのタクシーでは、例外なくラテン音楽を流していた。
聞き覚えのあるサルサが流れた。
「お、これ、グルーポ・ニーチェだね」
「なんだ、お客さん。サルサが分かるの」
ちょっと小太りで、鼻髭の感じがサルサ界の大御所、ヒルベルト・サンタ・ローサに似ている運転手が、笑顔で振り返り、わたしのほうを見た。
「何が好きなの」
「そうだなあ。マーク・アンソニーとかビクトル・ラボエとか。グルーポ・ニーチェやソン・デ・アスーカルなんてのも好きだよ」
わたしは自分が持っているCDの歌手の名前を挙げた。もちろん、ご当地カリ出身のグルーポ・ニーチェやソン・デ・アスーカルの名前を告げるのも忘れなかった。その一言で、運転手はご機嫌になった。これで、この運転手からぼられることはあるまい。
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