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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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 エミルセの家は、意外に広かった。入ったすぐのところがリビング兼ダイニングキッチンである。十五畳ほどはあるだろうか。その奥の右側がシャワールーム、左側が天井のない中庭で、洗濯物が干してあった。そして、またその奥に寝室が三つあるという構造になっていた。日本式にいえば3LDKだが、団地サイズよりはかなりゆとりがある。ただ、建物自体はかなり古く、築二~三十年といったところか。

 リビングのテーブルに座らされ、エミルセがコーヒーを出してくれた。すでに砂糖がたっぷり入っている。日本人には甘すぎるが、これがコロンビアでは一般的な「ティント」というコーヒーだ。日本にいるコロンビアーナたちも、喫茶店でコーヒーを飲むときは、砂糖を三杯も四杯も入れて飲んでいる。

 コロンビアはブラジルなどと並ぶコーヒーの輸出大国だが、いいコーヒー豆は日本などの大消費国が高値で買い上げてしまう。だから、コロンビアの庶民は安いクズ豆しか買えない。クズ豆ではコーヒー本来の味や香りをストレートで味わうことが出来ない。それで砂糖をたっぷり入れて飲む習慣が出来たのだろう。

「エバ。エミルセの子供は? ハズバンドは?」

「子供二人いる。女と男。女、たぶん近くにいる。男、いま学校。ハズバンド、十年前、アメリカ行った。アメリカで仕事してる。ハズバンド、アメリカで別の女と結婚した。コロンビアに帰らない」

「じゃ、エミルセたちはどうやって生活してるの」

「アメリカから、ときどきお金送ってくる。でも、ときどき。だから、お姉さん、貧乏」

「お姉さん、何歳」

「五十歳。わたしのお母さんみたい」

「エバは二十五歳だろ。ずいぶん歳が違うじゃないか」

「エミルセ、お姉さん。パパ、同じ。でも、お母さん違う」

 エミルセはエバの腹違いの姉だった。エバの父親には五人の妻がいて、エバ自身の母親は五番目の妻だった。そしてエバは五番目の娘。父親からすると、二十一番目の子供だ。エバが一番下、その上がイタリアにいるサリー、そしてパルミラにいる三人のお姉さんが、長女から三女だとばかりわたしは思っていた。腹違いの兄弟姉妹とは付き合いがないと思っていたからだ。だが、エミルセだけは腹違いだったのだ。

 日本なら腹違いの兄弟姉妹は仲が悪いものだ。それなのに、その腹違いの姉に母親代わりに育ててもらったという。腹違いでも、いまだにお互いに行き来がある。コロンビアらしい大らかさというのだろうか。


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フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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