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お土産以外の荷物をまとめ、二人でエレベーターを降りた。ボーイにちょっと挨拶し、外に出た。タクシーが拾える大通りまで、マンションの玄関から数十メートルくらいある。リュックサックを背負い、トランクを引きながら歩いているうちに、エバがふと足を止め、言った。
「リュージ。ホテル、お金高い。もったいない。あなた、お姉さんの部屋に泊まる、オーケー?」
いいも悪いもない。ただで泊まれる方がいいに決まっている。
「オーケー」
「でも、ファックスない」
「ファックス、いま要らない。あとで大丈夫」
ボゴタには、どうせ数日しかいるつもりはなかった。カリかどこかに行くだろう。そのとき必然的にホテルに泊まることになる。それで十分間に合うはずだった。
荷物を持って引き返すと、ボーイがドアを開けてくれた。たったいま出ていった二人が、数十秒も経たないうちに引き返してしまったので、内心不思議に思っているだろう。しかし、そんなことはおくびにも出さず彼は黙ってドアを開けた。
エバによれば、ボーイは三人が交替で二十四時間勤務しているらしい。ここは分譲マンションだから、エバたち居住者たちが毎月いくらかの管理費を払い、そこから三人の給料が出ているのは間違いない。人件費がいくら安いといっても、居住者のプライベートなことに口を挟み、職を失うようなことを直接彼らはしないだろう。
ふたたびエレベーターに乗り、今度は七階に上がった。そこの一番奥の部屋の鍵をエバは開け、わたしを招き入れた。イタリアにいるサリーの部屋だった。空き部屋にしているらしい。
ざっと部屋を見回したが、エバの部屋よりもリビングなどは、二倍は広い。部屋も三部屋ほどあって、三LDKといったところか。ソファやベッドなどの調度品も、かなりの高級品だった。
二回日本に出稼ぎに行ったといっても、サリーの滞在期間は九ヶ月、六ヶ月といずれも短い。そのサリーの部屋の方が、二年三ヶ月日本にいたエバの部屋よりも広いというのはどういうことか。
エバによれば、サリーはイタリアにも家を買っていたはずだった。どうしてそんなに金があるのか。
サリーは日本にいる間は、金を稼ぐことに徹していたプロ中のプロだった。何人ものなじみの客をたちまちつかみ、劇場の仕事が終わると毎日のように「デート」に励んでいた。外出できない地方の仕事を回されると、わがままを言って断り、自分でなじみの客に電話して、数時間単位でデートの約束を取り付けて、金を稼いでいた。おとなしいエバとは対照的な、わがままラティーナの典型だった。
エバも来日時の借金二百万円を半年で返したのだから、稼ぎが悪かった方ではないが、サリーはエバの三倍も四倍もの効率で稼いでいた。だから「資産」がこんなに残ったのだろう。
サリーはエバが送金したお金でイタリア人の恋人と一緒に再来日した。もちろん売春するためで、イタリア人の恋人といっしょに来たのは入管をすんなり通るためのカモフラージュだった。恋人にはホステスの仕事だと嘘をつき通したらしく、半年間稼ぐだけ稼いで帰っていった。
エバは、サリーが再来日してから、彼女の影響を受けて性格が変わっていった。金の稼ぎ方を教わったのだ。当初は「お姉さんに怒られるから、リュージもわたしにお金を払っていることにしてくれ」と言うような優しさを残していた。
だが、週末の一番デートの客がつきやすいときに、いつもわたしといっしょにいることで、金を稼ぎそこなっていることに気づいたのだろう。だんだん言い争うことが多くなり、彼女が捕まる半年前に実質的に別れた。いつのまにか、心の底まで本物の「娼婦」に変身していったのだ。
一年前の彼女の誕生日に、頼まれていたダイヤの指輪を買って持っていったのだが、欲しいものとは違っていたので「もう一つ買ってくれ」と言い出した。わたしはキレてしまい、それが直接的なきっかけで別れたのだ。
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