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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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「エバ。プロモーションはどこ」

「カワサキ」

「ふーん」

「デウダ(借金)はまだあるの」

「もう終わった。わたし、ハッピー」

「いくらだったの」

「二百万円」

 勘違いしている人が多いが、こういう外国人娼婦、とくにラティーナを扱っているブローカーには二種類ある。マネージャーとプロモーターだ。日本に来たい女を、様々な手段を使って入国させ、その見返りとして借金を背負わせ、回収していくのがマネージャー。日本で仲介料を取って仕事場を斡旋するのがプロモーターだ。両者を兼ねているブローカーもいるが、マネージャーの多くは、初期のころに来日し、日本人と結婚したラティーナたちがやっている。自由にコロンビアなどの国と日本を行き来できるからだ。

 エバの所属しているカワサキは、全国の劇場やデートスナックに何十人もラティーナを派遣している大手のプロモーターだった。マネージャーとは借金を払い終わったら、その時点で関係が切れるが、プロモーターとは仕事を斡旋してもらう限り、関係は続く。

 斡旋料を取られるので、フリーになって、友だちの紹介でスナックなどの楽な仕事場を探す場合もあるが、確実に稼げる仕事場はプロモーターが押さえているので、借金がなくなっても引き続きプロモーターの世話になっている女も多かった。エバも、そのひとりのようだった。

 夜中なので、首都高は空いていた。羽田空港のネオンが見えたので、「あれ、アエロプエルト(空港)」と教えてやった。

「ナリタ?」

「ノー、ハネダ。ドメスティック(国内線)」

「ボニート」

 エバは羽田空港の名前を知らなかった。まだ国内線には乗ったことがなかったのだ。

 

「元気?」

 そう言いながら、エバはわたしの太腿から局部に対してタッチしてきた。おとなしいと思っていたのに、意外に積極的なところがあった。わたしはこういうスケベな女が大好きだ。こちらも負けずに、運転しながらエバの太腿を触ったが、ジーンズなので、いまいち触りごこちがよくない。胸にタッチしてみた。エバのバストは、かなり大きくて弾力があった。触っているうちに、こっちの局部が反応してきた。

「エバ、大きくなった」

「あっ、スケベねー」

 そう言いながら、うれしそうにわたしの局部に触り続けた。

「でも、ここでは出来ない。あとでね」

 お預けを食った。ドライブだけで終わるかもしれないと思っていたが、ホテルまで行くつもりらしかった。だが、お金を要求されるのだろうか。お金を要求されるのなら、わたしは「客」としてデートの対象に選ばれたことになる。まだエバの真意が分からなかった。

「あなた、ボニート。かっこいい」

 先日と同じことをエバは言った。そりゃ、若いころなら多少は自信がったが、いまは中年にさしかかり、腹も出てきている。からかわれているのではと思ったが、どうやら本気で言っているらしい。

わたしはどちらかというと彫りの深い顔で、日本人らしくないと言われる。それに、東南アジアや南米のような開発途上国の女性は、太っていることに対して概して拒否反応がない。やせていると貧乏くさいと思われるのだ。わたしは、たまたまエバのタイプらしかった。

「エバ、オフィスに何人女がいるの」

「三人」

「誰? 名前は」

「どうして。あなた、知らない。あと二人、カジェ(街娼)の女」

 エバの説明によると、昼の一時から十一時までで、仕事が終わったら、ほかの二人の女は池袋で立ちんぼをしているのだという。おそらく経営者は、エバだけカワサキから派遣してもらい、ほかの二人はカジェでスカウトして調達したのだろう。

 立ちんぼの仕事は、夜の九時ごろから深夜の二時、三時ころまでだ。パーティルームの仕事を終えて、そのあとカジェに出れば、二重の稼ぎになる。体力的にはきついが、劇場の仕事をしている女にも、同じように二毛作をしているのがいるとは聞いていた。

「みんな、オフィスに寝てるの」

「ノー。二人はアパートある。池袋。オフィスに近い」

「エバも、そこで寝るの」

「わたし、ひとりでオフィスに寝る」

「どうして? 彼女たちといっしょじゃないの」

「友だちじゃない。だから、ひとりで寝る。問題ない」

 オフィスがどんな様子になっているのかは知らない。たが、昼間客を取っているところで寝るのは、気分のいいものではないだろう。初めて会ったとはいえ、同僚なのだから十日間くらい女のアパートに居候させてもらったほうがよさそうなものなのに、エバは嫌らしい。

「エバにはアパートないの」

「ない」

「どうして」

「お金かかる。わたし、いつも仕事、あっちこっち。だから、アパートいらない」

 だが、彼女のような仕事をしていても、アパートを借りている女はけっこういた。長期間滞在していると、荷物が増えてくる。それを置くアパートが必要になってくるのだ。

 もちろん、ひとりで借りるのはもったいないので、友人や兄弟姉妹と共同で借りたり、男のアパートに転がり込む場合が多い。エバのようにストリッパーの場合は楽屋に泊まれるので、アパートは必要ないといえば必要ないが、ふつうは我慢できない。彼女には、共同でアパートを借りるような信頼できる友人がいなかったのではないか。


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