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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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  わたしたちは、タクシーを拾ってエバのアパートへ戻った。買い込んだお土産が荷物になったからだ。部屋に戻り、土産物を広げ、キリストの像の入ったホログラムのネックレスを首に下げてみた。それを見たエバが「あなた、クリスチャンなの」と怪訝な顔で聞いた。

  もちろん、わたしはクリスチャンでも仏教徒でもない。無神論者だ。ただ、宗教を必要としている人間がこの世界に大勢いることは認めるし、さまざまな宗教が用いている儀式=システムが、人間の精神を変えうる力を持っていることも認める。その意味で、宗教学や精神世界については大いに関心があるが、自分自身はどの宗教に対しても客観的に見ていて、信仰心はない。

  キリストのホログラムは、奈良や京都に行ったときに仏像の土産物を買うような軽い気持ちで買ったもので、これを首に下げていれば、いくぶんコロンビアに溶け込んで見えるかもしれないという気持ちもあった。

  しばらくすると、エバが「新しいパスポートを作りに行ってくるから」と言い残して、一人で出かけていった。本気でイタリアに行くつもりらしい。

  一時間ほどで、エバは戻ってきた。

「エバ、もう終わったの」

「そう、リュージ、これ見て」

  エバは真新しいパスポートをバッグの中から取り出して見せた。コロンビアのパスポートは茶色の表紙だ。わたしは何人ものコロンビアーナから見せてもらっている。中身を確認してみると、彼女の写真、本名、出身地、髪の色などが記載されている。偽造でも何でもない、本物だ。

  その本物のパスポートが、ほんの一時間も経たずに出来上がってしまうことに驚いた。日本なら、一週間から十日はかかる。戸籍謄本や運転免許証などの身分を証明する書類も必要だし、受け取りには本人の住所当てに届いた葉書も必要だ。他人の名義を使った偽造を防ぐために、さまざまな手だてが講じられているのだ。

「エバ、コロンビアではこんなに早くパスポートができるの」

「できるよ、簡単」

  日本に来ているコロンビアーナたちには「偽造パスポート」で来ているものが、少なからずいる。といっても、パスポート自体は本物で、名前や年齢を偽って申請し、パスポートを作成するのだ。

  年齢を偽るのは、十八歳未満だと親の承諾書がないと出国できないし、日本に入国する際も、あまり若すぎると怪しまれて入管ではねられてしまうからだ。名前を偽るのは、いったん強制送還された女が再度入国しようとする場合で、姉妹や友人の名前を借りてパスポートを作ってやってくる。一度強制送還されたものは入管のリストに載っているから、結婚でもしない限り、一年のペナルティ期間が過ぎても日本に再入国することは難しい。だから他人名義のパスポートを作成して日本にやってくるのだ。

  こんなに簡単に正規のパスポートが作れるのなら、他人名義のパスポートを作るのも自分たちで難なくできてしまうのだろうなと思った。


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  麓の駅に着くと、エバが「どこへ行く」と尋ねた。

「うーん、そうだな。ボリーバル邸(Quinta de Bolivar)がここから近いから、そこに行きたい」

「オーケー」

  ボリーバル邸とは、グランコロンビア(現在のコロンビア、ベネズエラ、パナマ。のちに分裂)が千八百二十年にスペインから独立する際、先頭に立って闘った「独立の父」シモン・ボリーバルに対して、その功績を称えて贈られた白亜の豪邸だ。現在は資料館になっているとガイドブックに書いてあった。地図を見ても、一キロほどの距離だ。歩いて行ける距離なので、行ってみようと思ったのだ。

  ところが、エバは「危ないからタクシーで行く」と言う。付けていたタクシーに乗り込んだが、タクシーの運転手も行き先がボリーバル邸と聞いて、不機嫌になった。だが、そんなことを気にするまもなくボリーバル邸に着いた。

  入り口にはライフル銃を持った兵隊が立っていた。たしかに日本でいう重要文化財なのだろうが、銃で守らなければならないほどのものなのだろうか。それとも、それだけ治安の悪さを物語っているのだろうか。

  資料館には、ボリーバルの自筆の書簡などが展示されていたが、もちろん何が書いてあるのかさっぱり分からない。ざっと流して見て、庭に出た。コロニアル風の庭園だ。とくに広くはない。五分ほどで見て回れる程度の広さだった。

  二人で散策していると、バックパックスタイルの東洋人の青年と出会った。帰りのロープウエーの中にいた青年だった。そのときは、中国人か韓国人だとばかり思っていたので声もかけなかったが、わたしたちと再び会ったことで挨拶すると、「日本人ですか」と聞いてきたので彼も日本人だと分かった。向こうもこんなところに日本人が単独でいるなんて思ってもいなかったという。

  出口に向かいながら話をしてみると、何ヶ月もかけて南米を一周するつもりらしい。ボリーバル邸の外に出たところで、彼にこれからどこに行くつもりなのかと聞くと、「うーん、ちょっとボゴタ市内を回ってみるつもりです」と言い残して去っていった。お茶でもいっしょに飲んで、少し話しでも聞きたいという気はあったのだが、わたしたちがアベックなので、彼も気を利かしたのかもしれない。

  わたしたちがあんまりあっさり別れてしまったので、エバが「あなた、どうして彼と今日、いっしょにどこかに行かないの」と不満そうに言った。どうやら彼をわたしに押し付けて、フリーになりたい様子が見て取れた。そんなにわたしが邪魔なのかと、また腹が立ってきた。

 


 教会の方に戻ると、教会の左側の沿道に土産物屋が並んでいた。観光客といっても外国人が来るようなところではないから、ちょうど東京に修学旅行生が来たときに買うような安っぽい土産がいっぱい飾られている。

  まず目に付いたのは、キリストやマリアの像がホログラムで入った円形の首から紐で下げるプラスチックネックレスだ。値段を聞くと、千ペソだという。日本円で約百円。安いので、思わず三つ買ってしまった。

  次に目に入ったのが、馬の蹄をくり貫いて作った水筒だ。こちらは値段は一万ペソ。日本で見られないものだから、思い切って買った。あと、絵葉書など小物ばかり買い込んだ。

  エバが「これ、コロンビアのバス、チバよ」と言って、木製のおもちゃのバスを指した。バスといっても横に広く、屋根に野菜などを乗っけて装飾してある。

「田舎行くと、チバある。ボゴタ、ない。わたし、これ好き」

  エバが笑顔で言った。おもちゃでは具体的なイメージがわかなく、これは買わなかった。だが、日本には東南アジアの民芸品を現地で安く仕入れ、売っている店がいくつかある。大量に買いつけて売りに行き、旅費の足しにでもしようかというアイデアが頭をよぎったが、コネがなかったし、売れなかったときのことを考えて止めた。帰国してからサンプルを見せ、売れそうならエバに船便で送ってもらった方がリスクが少ないと思ったからだ。

  ロープウエーの乗り場まで戻ると、同様に出発を待っている二人連れの若いコロンビアーナがいた。にこにこわたしたちを見ている。エバの写真ばかり撮っているので、彼女たちの写真も撮りたいなと思っていると、エバが「あなた、彼女たち、撮る」と勧める。「でも、彼女たち知らないよ」と言うと、「大丈夫。彼女たち、コロンビアーナ」と勝手にオーケーを出した。

  恐る恐る記念写真を撮りたいと申し出ると、陽気な彼女たちはすぐさまポーズをとってくれた。わたしもいっしょに撮ってもらった。

  ロープウエーが上ってきたので乗り込んだが、なぜか彼女たちは乗ってこない。乗客は七人ほどで十分余裕はある。エバに「どうして彼女たち、乗らない?」と聞いても「分からない」と言うだけだ。ほかの友人と待ち合わせでもしていたのだろうか。下っていくわたしたちを、彼女たちは手を振って見送ってくれた。


 

「わたしね、大学の一年のころ、鉄板焼きのお店でアルバイトしていたの」

  エバが、下界の景色を眺めながら、ポツリと言った。

「鉄板焼き?」

「そう」

  そう言えば、銀座の鉄板焼きの店で昼飯を食ったときに、そんなことを彼女が言ったことを思い出した。

「そこの社長、日本人ね。彼がわたしに愛人になれって言うの。大学のお金も、アパートのお金も全部出してやるからって」

「それで、どうした?」

「もちろん、断った。わたし、そのとき十九歳。バージン。彼、おじいちゃん」

「何歳?」

「たぶん、五十五歳くらい」

「奥さんいたの?」

「そう」

  とんでもない野郎だ、と自分のことは棚に上げて腹を立てた。

「その店はどうした?」

「辞めた。お店終わってアパートに帰ると、十二時でしょ。怖いし、勉強できないし」

「じゃ、お金はどうした。ほかにアルバイトしたのか?」

「ゴルフ場のアルバイト」

「キャディ?」

「ノー、練習場の受付の係り」

「それでお金足りたのか?」

「ノー。それでお店のお客さんだったミツビシの人に相談したら、彼が助けてくれた」

「お金を?」

「うん、二十万円くらい」

「そんなに?  彼は恋人だったのか」

「ノー、友だちだけ」

「うそつけ。そんな大金を何もない女にプレゼントするものか」

「本当。わたしのお姉さん、イタリアにいるサリーね。彼女が日本人は悪いから、絶対だめだって怒るから、何もなかった。バージンだったし」

「彼は何歳?」

「三十歳より若い」

  自分は日本に出稼ぎに来ておいて、「日本人は悪い」もないもんだ。まったく、サリーという女は煮ても焼いても食えないやつだ。それにしても、そのミツビシの男も、自分が援助した初なコロンビアの女子大生が、数年後に日本に売春に来るなんて想像もしなかっただろう。エバと日本とは、やはり浅からぬ因縁があったのだ。


「ねえ、これ、見て」

  エバが指差したのは、前輪の片方がパンクしたタクシーだった。

「これ、わたしが送ったお金で買ったタクシー。レンタルで運転手に貸した。でも、彼、わたしがいないからムチャクチャに使った。だから、新しい車、一年でボロボロ。お姉さんに管理を頼んでいたのだけど、お姉さんも忙しいでしょ。だから、きちんと管理できなかった。

  わたし、コロンビアに帰って、これ見てビックリした。だから、彼、クビにした」

  なるほど、けっこう車は使い込んである。見た目は五、六年落ちの中古車といった感じだ。とても一年落ちの新車とは思えない。それにしても、タクシーの車を買い、レンタルするとは、いろんな商売を考えるものだ。

  コロンビアに来る前、エバと連絡したとき、何度か「わたし、タクシー持ってる」という話を聞いていた。だが、日本語を間違えているのだと思っていた。こんな商売ができるのだというイメージがわかなかったのだ。日本だと、タクシーは免許制だから、かってに増車したりできない。コロンビアでは、そんな規制はないのだろう。

  もし、わたしが国際免許証を持ってきていて、コロンビアのタクシーを乗り回している姿を想像すると、おかしくなってしまった。

  大通りに出て、タクシーを拾った。二十分ほど走って、山麓に着いた。ロープウエーがあった。

「わたし、まえに大学生のとき、ここ来たことある。ロープウエーと歩く、どっちにする。ロープウエー、お金高い。歩くのもできる。でも、歩くと危ない。ドロボウいる。日曜日は、たくさん人いるから大丈夫。でも、今日は水曜日だから、危ないよ」

  たしかに人は少ない。ロープウエーを待っている人も、七、八人いるだけだ。歩くとなると、一時間近くはエバと二人だけで山道を登ることになるだろう。命を狙われることはないにしても、ビデオもカメラも持ってきているので、それを盗られると、今後が困る。リスクをなるべく少なくするため、ロープウエーを選んだ。もちろん、往復チケットだ。

  ロープウエーは五分ほどで頂上に着いた。ケーブルカーもあったが、これは人が混む日曜日だけ営業しているらしい。頂上の駅からは石畳の道が上に続いていた。道の脇には、いくつかの小さな石像がある。明らかにインディオ文化のものだ。ガイドブックに載っていた、サンアグスティンのものと同じだ。こんなところに昔からあったとは思えない。向こうから移したものか、模造したものだろう。

  しばらく歩くと視界が開け、白い教会が見えてきた。モンセラーテ寺院だ。教会の前の広場には、遠足に来ているらしい子供たちが大勢いた。教会の中を覗いてみたが、取りたててみるものはない。ここに来る観光客の目的は、ボゴタ市内を一望することなのだろう。

  わたしも眺めてみようと、展望台のところまで行ってみた。晴れてはいるが肌寒い。高地のボゴタ市内から標高五百メートルなのだから、三千メートルは超えているだろう。赤道直下なのに、空気が薄いためにこんなに寒いとは驚きだった。

  景色そのものは、とりたてて特色があるわけではなかった。超高層ビルもないから、日本の地方都市とたいして変わりはない。だが、せっかくなので、ビデオで俯瞰を撮った。ついでにエバを立たせて撮ろうとすると、「ノー、わたし、だめ」と嫌がった。なんとかなだめて撮ったが、写真嫌いは相変わらずだった。やはり警戒しているのだろうか。

 


プロフィール
HN:
出町柳次
性別:
男性
職業:
フリーライター
趣味:
ネットでナンパ
自己紹介:
フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
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