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あるコロンビア売春婦と一年間恋人関係にあった私は、不法滞在で強制送還された彼女を追いかけてコロンビア本国に渡って彼女の家を訪ねた。そこで見たものは…
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ボゴタのエバの部屋で、エバと 一年ぶりのセックスを終えたあと、彼女にこれまで聞けなかったことを聞き始めた。

一番気になっていたのは、裁判で彼女を日本に連れてき たコロンビア人女性の名前が明らかにされていたことだった。彼女たちがマネージャーの名前を明らかにして、それで逮捕されるというようなことになったら、 必ず報復が待っている。実際、約束した借金を払わずに逃げた女の実家が、見せしめのために爆破されたという話も聞いていた。コロンビアに帰ってから彼女の 身の上に何か起こらないかずっと気になっていた。

「大丈夫。あれ、ウソ」

「じゃ。K市のスナックの店長の名前は。ペルー人だって裁判で言ってたけ ど」

「あれもウソ。本当は日本 人」

K市のスナックとは、彼女が捕まる直前に、トランクなどを宅急便で送った先だ。荷物を送り返 す必要から調べられたらしいが、エバはわたしと別れてからここのオーナーの愛人だったという話も聞いていた。

彼女が捕まったとき、彼女の一番の親友であるクラウディアに連絡をとり、二人の関係を聞いて みた。かつてのわたしたちのような「恋人関係」なら、いまさらわたしが面会に行く必要はないかもしれないと思ったからだ。

ところが、クラウディアはこう言った。

「彼とはお金だけの関係。エバは愛してない。だから、あなたエバを助け る。お願い」

  それを聞いてわたしは、わざわざ四国の松山まで面会に行ったのだ。

「じゃ、コロンビアに帰るつ もりだったというのは」

「それは本当。お姉さん、日 本に来る、できなかったでしょ。だから、わたし、もう帰るつもりだった」

彼女は捕まる約一ヶ月前に、サリーとは別のアンパロという「一番貧乏なお姉さん」をイタリア 経由で日本に入国させようとして失敗していた。サリーと結婚しているイタリア人を「にわか恋人」に仕立て、入管の目をごまかそうとしたのだが、二人は別々 に尋問され、話が食い違っていたため追い返されてしまったのだ。

入管は、これは怪しいとにらんだ人間は徹底的に取り調べる。本当に夫婦関係であるサリーとな らともかく、インスタントカップルでは出会った日にち、親戚関係など細かいことを聞かれたら絶対ボロが出る。やるなら徹底的に打ち合わせをしておかなくて はならないが、それを怠っていたため怪しまれたのだ。

エバはこれで二人の渡航費用五十万円をドブに捨てた形となったため、すごく落ち込んでいた。 お姉さんが来れないのなら、もう帰国しようという気持ちになっていたのは嘘ではないだろう。

それにしても入管の出入国記録を調べれば誰と一緒に入ったのか分かるだろう。それにK市のス ナックの店も調べれば、ペルー人の話が本当かどうかも分かるだろう。警察も不法滞在だけで立件したため、管理売春立件に必要な面倒なことは調べなかったの だろうか。


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 エバを取り戻したが、彼女には自分の思うとおりにならなかったという不服があるように感じられた。四日間部屋は借りたが、仕事の関係上、ずっといっしょにいるわけにはいかない。その間に、イラン人のところに遊びに行く可能性もあったが、そこまで監視は出来ない。彼女の「良心」に任せた。

 こんな女にどうしてそこまでするのかと思われるかもしれないが、この時点では、彼女の存在はわたしの中で自分でも止めることが出来ないほど大きくなっていた。金銭的な援助は出来ないが、やれることなら何でもやってあげるという気持ちになっていたのだ。

 ウィークリーマンションは、ひとり用をエバの名義で四日間借りた。料金は二万五千円した。テレビのコマーシャルではすごく安いように宣伝されているが、それは郊外のマンションの場合で、都内のはけっこう高くて、ちょっとしたビジネスホテルと変わらない料金だった。もちろん、十日とか一ヶ月単位で借りれば単価は安いのだろう。しかし、ラブホテルよりは安いし、二十四時間利用できるのだから、わたしには好都合だった。

 部屋はカード式になっていて、ひとりで入るときの使い方を教えて、中に入った。狭いワンルームだったが、一応テレビや冷蔵庫など一式揃っていた。

「ビデオがない」

 部屋を見まわして、エバが文句を言った。

「わたし、ビデオないと、ひとりで寂しい。あのイラン人のアパート、ビデオあった。だから寂しくなかった。あなた、ビデオ買って」

 せっかく言うことをきかせたと思ったら、今度はおねだり病が始まった。

「ビデオはうちに二つある。明日、それを持ってくる。四日間だけだから、それで我慢しろ」

「本当?」

 実際に、ビデオを持ってきても、見るとは限らない。わたしに難癖つけているとしか思えなかった。

 近くのファミリーレストランで食事をし、コンビニで翌日のためのパンやジュースなどを買ってマンションに戻った。途中、車の中で、わたしの携帯を使って男に電話をした。翌日のデートの約束を確認したらしい。こんなことは、付き合い出した当初は絶対しなかったことだ。確実にわたしたちの間には、隙間風が吹き始めていた。

 部屋では、しばらくテレビを見ながら過ごしていたが、自然にセックスを始めた。だが、この日のエバは燃え方が違った。喘ぎ声が大きく、両隣に聞こえそうなので、あわててタオルで口をふさいだほどだった。

 今までの経験上、エバはセックスの間隔が開いていると、燃えた。劇場の仕事といっても、場所によっては本番や個室がないところもあって、十日間セックスしていないこともある。そのあと迎えに行って、セックスをすると、こちらが驚くほど彼女は燃えた。普段、一日に何十人も受け入れているから、突然そういう環境に入ると、体がうずくらしかった。

 エバの燃え方を見ていると、イラン人のアパートではセックスしていなかったのではないかとも思った。

 わがままなサリーは、稼ぎの少なそうな仕事場を紹介されると、キャンセルを連発して、劇場の仕事から締め出され、自分で勝手になじみの客に電話してデートを繰り返していた。たが、来日当初はエバと同じように劇場の仕事を転々としていた。

 そのとき、同じ劇場に回されたらどうするのと、エバに聞いたことがあった。彼女は即座に「キャンセルする。同じ劇場は恥ずかしい。ダメ」と返答した。サリーはともかく、エバには純情な部分があった。だから、姉がセックスしている隣りの部屋で、自分もほかの男と…ということは拒否していたかもしれない。「姉が帰ったら、してもいい」と、もうひとりのイラン人と約束していた可能性がある。それをわたしが無理やり引き離した、という線は充分考えられた。それで、久しぶりのセックスで、異常な燃え方をしたのか。

 二時近くになったので、「帰る」と言うと、「寂しいから、朝までいっしょにいて」とエバが懇願した。しかし、ひとり用に借りた部屋なので、泊まるわけにはいかない。近くに路上駐車している車も心配だった。「朝、電話する」と言い残して、自宅に戻った。

 翌日と翌々日は意識的に会わなかった。エバがデートの約束を取り付けているのを知っていたからだ。だが、最終日には、エバと鎌倉に行く約束をしていたので、朝迎えに行ってチェックアウトをした。

 鎌倉に行き、大仏を見せるとエバは予想以上に感激した。

「わあー。すごい。こういうの、お姉さんのサリー、大好きなの。ネ、ネ、写真撮って。お姉さんに送るの。サリーがいたときに来たかったなあ」

「じゃ、今度は京都や奈良に行こう。もっとすごいぞ」

「行きたい。いつ行く」

「今度の休みだ。遠いからな。三日くらい休みがないと無理だ」

「それじゃ、当分無理ね。わたし、もう休みない」

 結局、この直後にわたしたちは破局してしまい、京都行きは実現しなかった。

 


 だが、気になっていたのは、エバの荷物だ。イラン人のアパートに置きっぱなしになっている。送って行ったとき彼女とは、サリーが帰ったあと、次の仕事先に行くまでの四日間は、わたしがウィークリーマンションを借りて住まわせることになっていたからだ。

「エバ、どうして荷物、持ってこなかったんだ」

「だいじょうぶ。お姉さんが彼に頼んで、四日間居させてもらうことにした。だから、心配ない」

 わたしはカッとなった。

「だいじょうぶじゃないだろ。もうひとりのイラン人は、お前の恋人か」

「違う。友だちだけ」

「だったら、サリーが帰ったら、お前があそこのアパートにいる必要ないだろ。わたしがウィークリーマンション借りてあげると約束してたじゃないか。どうして、いるんだ。おかしいだろ。あのイラン人とセックスするんだろ」

「しない。もししても、お金もらう」

 数日間いっしょにいたのだから、何もなかったとは思えなかった。だが、プロ中のプロであるサリーが付いていたのだから、金をもらわずにセックスさせることはなかったと思う。しかし、サリーがいなくなる以上、わたしはあのイラン人たちからエバを引き離したかった。それで最後の賭けに出た。

「もし、エバがあのアパートにいるのなら、わたしはエバとはセパレートする。今日でラストだ。もう会わない」

「何もない。だから、心配ない」

「だったら、どうしてあのアパートにいる必要があるんだ」

 話は堂々めぐりになった。泊まるところはわたしが用意すると言っているのだから、彼女がイラン人のアパートにこだわる必要性はまったくない。ほかにこだわらなくてはならない理由があるはずだった。

 わたしは脅しでエバと別れると言ったのではなかった。エバの言ってることは理屈が通らない。どんな事情があるにせよ、わたしではなく、イラン人のアパートを選ぶのなら、きっぱりと別れるつもりだった。

 沈黙が続いた。わたしが真剣なのを見て取ったのだろう。サリーが突然言った。

「リュージ、あなた、エバのこと愛してる」

 わたしはちょっと返事に詰まり、しばらく間を置いてから「愛してる」と言った。

「わたしもエバの話はおかしいと思う」

 サリーが意外な援護射撃をわたしにしてくれた。それで流れが変わった。

「リュージ、分かった。わたし、あなたの借りてくれるアパートに行く。でも、わたし、今週休み。仕事ない。だから、お客さんとデートする。それはオーケー? あなた怒らない?」

 そこまでは束縛できなかった。わたしが彼女に現金を払えない以上、休みの間に彼女がなじみの客とデートするのは黙認するしかなかった。

 サリーは、「リュージ、あなた、エバの恋人。妹をよろしくね」と言った。

 サリーを見送り、わたしたちは高速でイラン人のアパートに戻った。だが、アパートの近くで、エバは「ここで待っていて。わたし、ひとりで行く」と言った。やはりおかしい。もうひとりのイラン人にアプローチされていて、わたしがいっしょに行くと、話がこじれて喧嘩になることを恐れたのではないか。わたしのことを恋人だと言わず、「ただの客だ」とごまかしていたのではないか。

 二十分ほど待たされて、エバがトランクを持って戻ってきた。

「もうひとつ荷物ある」

 わたしはエバに付いて、アパートに荷物を取りに行った。サリーの「恋人」だった男が、さびしそうな顔で、「もし時間があるなら、お茶でも飲んで行きませんか」と言った。エバがどう説明したのかしらないが、関わりを持ちたくなかったので、「時間がない」と言って断った。

 それに、エバを待っている間に携帯電話で都内のウィークリーマンションに予約を入れた。七時にチェックインすると言っておいたので、道が混むと遅れる可能性があったのだ。









 エバがやっと十日間の休みを取ったのは、知り合ってから約八ヶ月後だった。サリーの恋人のイタリア人が二ヶ月間来日していて、その彼が帰るという週に、エバとサリーも休みを取った。その週は、エバとサリーの三人で、豊島園に行ったり、横浜の山下公園に遊びに行った。サリーがイタリア人と暮らすために短期間、友達のコロンビアーナから又借りしたアパートで、食事も作ってもらったりした。

 その二ヶ月後、サリーが自主的に帰国することになった。その週は、エバはプロモーターから地方の仕事を割り当てられた。姉と最後までいっしょにいたいという彼女は、地方の仕事を断り、休みを取った。

 姉のサリーは、イタリア人の恋人が帰国したあと、イラン人の恋人を作り、その男のアパートに転がり込んでいた。もっともサリーはそのイラン人を愛しているわけではなく、利用しているだけで、そのアパートを拠点にしてなじみの客に電話をかけ、最後の荒稼ぎにいそしんでいた。

 イラン人のアパートは埼玉にあり、同僚と二人で木造の古いアパートに住んでいた。現場労働者だった。わたしは事情を知らされておらず、エバに「今週は休み。お姉さんがいるアパートに連れていって」と言われてピックアップしただけだった。アパートに行き、イラン人が出てきてびっくりした。

「どうなっているんだ。お前、もうひとりのイラン人と恋人なのか」

「心配しないで。何もない。お姉さんといっしょにいるだけ」

 そんなことをいわれても、ひとつのアパートに二人の男と二人の女がいる。一組は出来あがったカップルだ。残された二人に何もないはずはない。だが、きちんと話をするまもなく、エバは荷物を持ってアパートの中に消えて行った。

 数日後、エバから「お姉さんを成田空港に連れて行って」と頼まれた。わたしは約束した時間に埼玉のアパートに行った。しかし、アパートから運び出したのは、サリーのトランクだけだった。

「エバのマレータ(トランク)は」

「いいから、あとで。時間ない」

 エバに促されて、わたしたちは車に荷物を運び込んだ。イラン人は悲しそうな顔をしていた。エバによると、サリーは前夜まで、彼女が帰国することを告げていなかった。帰国することを告白されたイラン人は、涙をポロポロ流して「帰らないでくれ」と言ったという。だが、サリーが本当に愛しているのは彼ではなく、イタリアに帰ったイタリア人だ。裏も表も知っているわたしには、イラン人が哀れでならなかった。

 成田へ向かう途中、サリーがわたしにコンドームを持ってないかと尋ねた。確かに車のダッシュボードの中に、コンドームを入れてある。万一のことを考えて、置いてあるものだ。だが、サリーがどうしてコンドームが欲しいというのか分からない。戸惑っているわたしを見て、「恥ずかしくない。早く」とせかした。

 箱の中から三個のコンドームを抜き出すと、サリーはドルの札束を取り出し、丸めてコンドームの中に入れる仕草を示した。

「コロンビアのイミグレーション、泥棒するからね。お金たくさん持っていると危ない。だからコンドームにお金を入れて、オマンコの中に隠しておくの」

 確かにコロンビアだけでなく、開発途上国の入管は腐敗している。大金を持っていると、入国の際に難癖を付けられて、金をたかられるという話はよく聞く。オーバーステイで帰国するのだから、サリーがコロンビアの入管で難癖をつけられる可能性は充分あった。

 だが、コンドームにコカインやハッシッシなどの麻薬を入れて、飲みこんだり局部に隠して持ちこむ手口は新聞などでも知っていたが、現金を局部に隠すというのは初めて聞いた。

 サリーが持っていたドルは、百ドル札で百枚以上あったと思う。百万円以上だ。ほかにも持っていたかもしれない。銀行送金もこまめにしていたが、銀行送金にすると手数料を取られる。ドルで持ちこむ危険性と、手数料との損得勘定をして、最終的に現金で持っていくことにした分である。

 彼女はわずか九ヶ月しか日本に滞在しなかった。借金は背負っていなかったから、まるまる彼女の懐に入ったはずだ。おそらく最低でも五百万円は、日本人やイラン人などの客からふんだくったと思う。エバの姉でなかったら、絶対に関わりたくないタイプのコロンビアーナだった。

 空港での検問が心配だったが、サリーのパスポートとチケットを見せ、わたしたちは「見送りです」と言うと、すんなり通過できた。車を駐車場に入れ、先にターミナルで降ろしていたエバたちと空港内で落ち合った。

 サリーのチェックインを終えて、わたしたちは空港内のレストランで食事を摂った。珍しく、しまり屋のサリーが送ってくれたお礼にご馳走するというのだ。

「リュージ、ありがとうね。わたし、コロンビアに帰ったら、あとでイタリアに行く。あなた、イタリアに来たらわたしの家に泊まっていいよ。あなたはわたしのファミリーと同じだから」

「うん、行くよ」

 本当に行くかどうかは分からないが、イタリアにも興味があった。彼女たちコロンビアーナは、日本だけでなく、スペインやフランス、イタリア、イギリス、ドイツなどの西欧先進国にも出稼ぎに行っていた。コロンビアには、スペイン系だけでなく、ドイツやイタリアからの移民の子孫もいる。日系ペルー人や日系ブラジル人が日本に出稼ぎに来るのと同じような現象が起きていた。機会があれば、西欧のそういう事情も見てみたいと思っていたのだ。

 


「分かった。二万円プレゼントする。でも、わたしは『お客さん』になるのは嫌だから、今晩はセックスしない。いいな」

「分かった。ちょっと待っててね」

 エバは楽屋に戻って行った。お客に断りの電話を入れに行ったのだろう。

 毎日でもいっしょにいたいほどの関係だったから、セックスしたいのはやまやまだったが、わたしにとっては「金ではセックスしない」というのが彼女への、わたしの愛の意思表示だった。それ以上に、知らないのならともかく、分かっていて彼女をほかの男に抱かせたくなかった。

 五分ほどでエバは戻ってきた。今度はバッグも持ってきている。彼女を助手席に乗せ、二万円を渡した。近くのファミリーレストランに行った。わたしは何を言っていいか分からず、黙っていた。

「怒ってる?」

「怒ってないよ」

 それだけ言って、また黙っていた。彼女は「これ、返す」と言って、二万円を突き返してきた。だが、いったん渡したものは受け取れない。再度、彼女の手に二万円を握らせた。

 そのあとホテルに行ったが、宣言したとおり、彼女には手を触れなかった。気まずい雰囲気が続いたが、そのうち疲れていた彼女は眠ってしまった。もちろん、迫れば彼女はわたしを受け入れるだろう。だが、わたしは「わたしはお前の周囲にいる男たちとは違うんだぞ」ということを彼女に分からせたかった。だから、意地でも指一本触れなかった。

 

 

 それ以来、エバは食事代やラジカセ、ゲームボーイなどをねだることはあっても、数万円単位の現金を要求することはなかった。

 その代わり、彼女はわたしと付き合い出してから一年間、一日も休まず働いた。本当は休ませたかった。休みを取らせ、温泉や京都・奈良などの観光地に連れて行きたかった。深夜に落ち合い、ホテルに行ってセックスをして、朝送り届けるというだけの行為には飽き飽きしていた。

 だが、彼女たちの休みは十日間単位である。その間は無給になる。普通は二~三ヶ月に一回は休みになるのだが、エバはプロモーターに頼み込んで、どこかの仕事場に押し込んでもらっていた。性格もよく、客受けもいいエバは、プロモーターにも好かれているらしく、無理を聞いてもらえた。

 わたしにとって、一番楽しかったのは、エバが二ヶ月間、劇場ではなく千葉のスナック勤めをしているときだった。昼から営業している劇場と違って、スナックだと夕方まで自由時間である。そのときは、朝から海へ行ったり遊園地に行ったりした。本当に楽しかった。

 しかし、エバは「スナックはデート少ない。三日にひとりくらいしかお客さんつかない。わたし、スナック嫌い」と言い出し、劇場の仕事に戻ってしまった。無理に休ませれば、アパートのないエバを泊めるウィークリーマンションでも借りる必要があったし、彼女が稼ぎ損ねる金額を保証させられかねなかった。

 劇場の仕事であれば、十日間で固定給十三万円のほかにプライベート料金のバックやチップ、なじみの客とホテルに行ったときのデート代などで三~四十万円は稼いでいた。そんな金をわたしが肩代わりできるはずもない。彼女の好きなようにさせるしかなかった。

 普通のコロンビアーナは、ここまで金に固執しない。借金を払い終わり、フリーになったら、友だちの紹介でスナックやヘルス、立ちんぼなどに「トラバーユ」する。劇場の仕事は肉体的にハード過ぎるから、収入が多少減っても、拘束時間が少ない仕事に移るのだ。借金さえ払い終わっていれば、プロモーターが仕事場を変わることに干渉はしない。そのへんはまったく自由意思で行われる。

 プロモーターの紹介ではなく、フリーでスナックで働く場合、本当に自由出勤である。日当は店によって違うが、だいたい五千円から一万円。デートの客が付いたら、その日当は払われない。八時とか九時とかの出勤時間に遅刻しても、日当はカットされる。それで、気分が乗らなかったりすると、勝手に休んでディスコで踊っている。夕方まで寝ていられるから、不況でデートする客が付きにくいということを除けば、天国みたいな環境だ。

 立ちんぼも、シマを仕切っているやくざに規定のショバ代さえ払っていれば、何時に行って何時に帰ってもいい。警察や入管の取締りがありそうだという情報が入れば、休む。危険性さえ考えなければ、一番効率のいい職場だ。エバも一時、友だちに誘われて、夜中にアルバイトしたことがあったらしいが、「わたし、男に声をかけるの恥ずかしくて出来ない。酔っ払いも怖いし」と言っていた。積極的に声をかけなくては仕事にならないので、向き不向きがあるのだ。

 ヘルスや金髪パーティルームは、それほど自由ではない。拘束時間も比較的長いし、女の子のローテーションもあるから勝手には休めない。オーバーステイだと働かせないヘルスもあった。

 わたしとしては、エバにせめて都内のスナックで働いてもらいたかった。ビザがないから、ホステスだけの店では働けない。当然、デートスナックしかないだろう。それはしょうがないとしても、いっしょにアパートを借り、食事を作ったり、休みにどこかに出かけたりという生活をしたかった。だが、彼女は短期間で確実に稼げる劇場の仕事を辞めようとはしなかった。


プロフィール
HN:
出町柳次
性別:
男性
職業:
フリーライター
趣味:
ネットでナンパ
自己紹介:
フリーライター。国際版SNS30サイト以上登録してネットナンパで国連加盟国193カ国の女性を生涯かけて制覇することをライフワークにしている50代の中年。現在、日刊スポーツにコラム連載中(毎週土曜日)。
新著「体験ルポ 在日外国人女性のセックス」(光文社刊)好評発売中。
「サイバーセックス日記」http://demachiryuji.seesaa.net/
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