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全部食べ終えたあと、エバはどこへ行きたいかと聞いた。
わたしは「エバのパパとママのお墓に行きたい」と言った。彼女はボゴタに現在住んでいるが、生まれ育ったのはもっと田舎だった。わたしは彼女がどんな所で育ったのか知りたかった。とたんに彼女は「あなた、わたしのストーリーを書くつもりか」と顔を曇らせた。
わたしは「そう、わたしは書く。売れてお金持ちになったら、半分プレゼントするよ」と茶化して返事した。その方が、中途半端に嘘を言うよりいいと思ったからだ。
「遠い」とエバは言った。
「どこ?」
「バランカベルヘマ。サンタンデール州にある」
エバの出身地については、付き合い始めたころにも聞いたことがあったが、聞いたこともない土地だったので、忘れてしまった。しかし、コロンビアについてはけっこう詳しくなったいま聞いても分からない。
持っていった「地球の歩き方」の地図を開いても、載っていない。サンタンデール州という州のことさえ載っていない。日本では、この「地球の歩き方」以上にコロンビアについて詳しいガイド本はなかったので、知らなくて当然だった。
エバの両親は、すでに亡くなっていた。母親は五歳のときに、父親は十八歳のときに、共に病気で死んだ。彼女は二十一人兄弟の末っ子だった。といっても、彼女の母親が二十一人も生んだわけではない。エバの父親には五人の妻がいて、彼女の母親は五人目の妻だった。そして、五人の娘を産み、エバはその末っ子だった。
このことも、出会った当初に聞いていたが、「こんなことは恥ずかしいから、ぜったいにシークレット」と言っていた。
コロンビアは、ほとんどがカトリック教徒である。一度結婚すると、離婚は原則認められない。仮に前妻が死んで、後妻をもらったとしても、四人も続けて死ぬわけがない。おそらくエバの母親は、愛人のような存在だったのだろう。
「お墓、わたし、どこにあるのか分からない。昔、一回行っただけ。でも、お姉さん知ってる」
行く気になったらしい。
彼女の部屋には、両親の写真の類がいっさい飾ってなかった。ラテン諸国はファミリーの結束が固いはずだ。日本に来ているコロンビアーナで、故国に子供を残して来ている女は、たいてい自分の子供の写真を持ち歩いて、親しくなると「かわいいでしょ」と自慢げに見せてくれる。
両親の写真がないのに合点がいかなかったので、「どうして、パパ、ママの写真がないんだ」と聞いてみた。すると、「お姉さん、持ってる。でも、わたし、持ってない」と言った。いまでこそ、コロンビアではカメラは身近なものになったが、彼女の母親が死んだ二十年くらい前は、めったに写真を撮る機会がなく、末っ子の彼女には写真が回ってこなかったのだろうか。
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