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「ねえ、これ、見て」
エバが指差したのは、前輪の片方がパンクしたタクシーだった。
「これ、わたしが送ったお金で買ったタクシー。レンタルで運転手に貸した。でも、彼、わたしがいないからムチャクチャに使った。だから、新しい車、一年でボロボロ。お姉さんに管理を頼んでいたのだけど、お姉さんも忙しいでしょ。だから、きちんと管理できなかった。
わたし、コロンビアに帰って、これ見てビックリした。だから、彼、クビにした」
なるほど、けっこう車は使い込んである。見た目は五、六年落ちの中古車といった感じだ。とても一年落ちの新車とは思えない。それにしても、タクシーの車を買い、レンタルするとは、いろんな商売を考えるものだ。
コロンビアに来る前、エバと連絡したとき、何度か「わたし、タクシー持ってる」という話を聞いていた。だが、日本語を間違えているのだと思っていた。こんな商売ができるのだというイメージがわかなかったのだ。日本だと、タクシーは免許制だから、かってに増車したりできない。コロンビアでは、そんな規制はないのだろう。
もし、わたしが国際免許証を持ってきていて、コロンビアのタクシーを乗り回している姿を想像すると、おかしくなってしまった。
大通りに出て、タクシーを拾った。二十分ほど走って、山麓に着いた。ロープウエーがあった。
「わたし、まえに大学生のとき、ここ来たことある。ロープウエーと歩く、どっちにする。ロープウエー、お金高い。歩くのもできる。でも、歩くと危ない。ドロボウいる。日曜日は、たくさん人いるから大丈夫。でも、今日は水曜日だから、危ないよ」
たしかに人は少ない。ロープウエーを待っている人も、七、八人いるだけだ。歩くとなると、一時間近くはエバと二人だけで山道を登ることになるだろう。命を狙われることはないにしても、ビデオもカメラも持ってきているので、それを盗られると、今後が困る。リスクをなるべく少なくするため、ロープウエーを選んだ。もちろん、往復チケットだ。
ロープウエーは五分ほどで頂上に着いた。ケーブルカーもあったが、これは人が混む日曜日だけ営業しているらしい。頂上の駅からは石畳の道が上に続いていた。道の脇には、いくつかの小さな石像がある。明らかにインディオ文化のものだ。ガイドブックに載っていた、サンアグスティンのものと同じだ。こんなところに昔からあったとは思えない。向こうから移したものか、模造したものだろう。
しばらく歩くと視界が開け、白い教会が見えてきた。モンセラーテ寺院だ。教会の前の広場には、遠足に来ているらしい子供たちが大勢いた。教会の中を覗いてみたが、取りたててみるものはない。ここに来る観光客の目的は、ボゴタ市内を一望することなのだろう。
わたしも眺めてみようと、展望台のところまで行ってみた。晴れてはいるが肌寒い。高地のボゴタ市内から標高五百メートルなのだから、三千メートルは超えているだろう。赤道直下なのに、空気が薄いためにこんなに寒いとは驚きだった。
景色そのものは、とりたてて特色があるわけではなかった。超高層ビルもないから、日本の地方都市とたいして変わりはない。だが、せっかくなので、ビデオで俯瞰を撮った。ついでにエバを立たせて撮ろうとすると、「ノー、わたし、だめ」と嫌がった。なんとかなだめて撮ったが、写真嫌いは相変わらずだった。やはり警戒しているのだろうか。
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