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幹線道路の途中で料金所があった。二千ペソの通行料を払わされた。幹線道路といっても、アスファルトで舗装されているのはごく一部。ただ道幅が三車線くらいあって広いだけだ。だが、通行量が少ないので、タクシーは百キロくらいのスピードで突っ走った。
パルミラの町に入り始めたとき、エバが突然「あっ、あれ、クラウディアじゃない」と大声を上げた。クラウディアというのは、日本にいたときエバの唯一の親友で、エバが逮捕された十日後に同じように逮捕され、強制送還されたコロンビアーナだ。
「えっ、どれ、どれ」
「さっき道を歩いていた金髪の女。クラウディアはパルミラ出身なのよ。わたし、一ヶ月前にパルミラに来たときも、彼女に会わないかと、道を歩いている人を一生懸命見てたけど、会わなかった。彼女に会いたい」
「彼女の連絡先は知らないんだろ」
「知らない」
「そんなに会いたいなら、電話番号くらい教え合っていればいいじゃないか。エバが『教えるな』と言うから教えなかったんだぞ」
「……」
エバは、日本にいるコロンビアーナの誰にも本当は心を許していなかった。本当の姉妹でもこじれているのだから、赤の他人、しかも売春婦仲間に自分の実家を知られたら、万一のときに骨までしゃぶられると思いこんでいた。
エバが捕まったとき、クラウディアは差し入れの品物を渡すから、エバにプレゼントしてくれとわたしに言った。不幸にして、クラウディアはわたしに差し入れの品物を渡す前に逮捕されてしまったが、そんな彼女にも、エバは「わたしのアパートの電話番号は、絶対クリスにも教えないで」と言う態度をとったのだ。
「いまさらそんなこと言っても遅いよ。だけど、クラウディアじゃないかもしれないじゃないか。似たような顔の女はいっぱいいるだろ」
「でも、わたし、前にアドレアーナ、ここで見た。アドレアーナ知ってる?」
「知らない」
「前、仕事いっしょの女。わたし、彼女のこと気がついた。でも、彼女はわたしのこと気がつかなかった」
「どうして声をかけなかったんだ」
「わたし、彼女のこと好きじゃないから」
エバはアパートを借りず、いつも自分の荷物をトランクに詰めて持ち歩いて移動していたから問題はなかったが、友人と共同でアパートを借りていると、誰かが逮捕された場合、よくトラブルが起こるらしい。
以前、別のコロンビアーナに尋ねたことがあった。
「もし、女が捕まったら、アパートの荷物はどうなるの」
「たぶん、ほかの女がドロボーするよ」
強制送還されるときは、トランク一個分くらいしか持って帰れない。エバの場合も入管で最低限のもの以外は捨てさせられた。仲のよい兄弟姉妹が日本にいる場合は、宅急便で送ることもできるが、ふつうは電化製品や装飾品などは、みんなで山分けしてしまう。それで、コロンビアーナたちは、ある程度稼ぎ終わったら、いつ捕まってもいいように、帰りの航空券を買っておき、現金と共に持ち歩いている。ほかの物は捨ててもいい覚悟なのだ。
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