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「あなた、これ分かる?」
エバが指差した。よく見ると、キッチンのカウンターの上に新品の電話機が置いてある。しかし、線が繋がっていない。
「今日、ここに電話の工事の男が来てる。いま下にいる。あなた、これやって」
どうやら長いこと待たされていた電話工事を、今日このアパートでやっているらしい。しかし、エバに頼まれて線を繋ぎ、コンセントを入れてもウンともスンともいわない。ベッドルームにももう一台電話機を用意してあったが、こちらも機能しない。回線工事がまだ行われていないのだろう。
「エバ、これダメ」と言うと、エバはインターフォンで管理人の男と何やら話し始めた。話を終えると、エバが言った。
「男、あとで来る。だから、あなた、隠れる」
電話工事の男にも、わたしが彼女の部屋にいるのを知られるのが嫌らしい。ベッドルームとリビングの両方の工事をする間、わたしにバスルームに隠れていろというのだ。正直言って、面倒くさいなと思った。
しばらくして、電話工事の男がやって来た。だが、エバはその時になっても隠れろとは言い出さなかった。わたしはソファに座り、無言で工事が終わるのを待っていた。十分くらいで工事は終わった。男が部屋から出て行くと、エバは受話器をさっそく取り、発信音がするのを確かめ、うれしそうに言った。
「リュージ、あなた、ラッキーね。コロンビアに来たその日に電話が来た。わたし、ハッピー、ハッピー」
彼女のファミリーは、イタリアにいるサリー以外、家には電話がない。ボゴタにいる真ん中の姉のリリアナとは、彼女の勤めている会社で連絡がついたが、カリに隣接したパルミラという町にいる三人のお姉さんたちとは、隣近所の家に電話して呼び出してもらうしか連絡方法がなかった。
お姉さんが貧しくて電話を引けないというのは納得できる。しかし、エバの住んでいるのは首都のボゴタで、それもノルテという高級住宅街だ。「一年待っているのに、まだ電話が来ない」と言うのを半信半疑で聞いていたのだが、本当だったのだ。だが、なぜこんなに電話事情が悪いのだろうか。不思議だ。
電話が繋がったので、さっそくエバは電話帳をめくり、ホテルの欄を探した。この近くに目星を付けていたホテルがあるというので、そこにはファックスがあるのかと聞いた。彼女は「分からないけど、聞いてみる」と言った。
エバはそのホテルの電話番号を見つけ、電話した。しばらく交渉したあと、送話口をふさいで言った。
「リュージ、大丈夫。ファックスある。でも、ホテルちょっと高いね。大丈夫?」
「いくら」
「六万ペソ、六千円くらい」
「大丈夫」
「オーケー」
コロンビアの物価にしてみれば、六千円は高い方だが、日本ではビジネスホテル並みの値段だ。安いのにこしたことはないが、あまり汚くて設備が悪いのも困る。また、治安にも不安がある。彼女のアパートに近いのも重要な条件だし、エバに任せることにした。
話がまとまり、さっそく荷物を持ってホテルに移動することにした。
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