[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
空港には、五時過ぎに着いた。料金は八千ペソだった。ボゴタに着いた日に、空港からエバのアパートまで行った金額より安い。どこの国でも、空港で客待ちしているタクシーはぼるので、空港から市内へ行くより、市内から空港へ行くほうが安いが、まず妥当な料金だった。
空港でのチェックインは、客がまだほとんどいないこともあって、すんなり終わった。型どおりのエックス線検査とボディチェックを受けて、空港内に入った。中はがらんとしていた。コーヒーショップもまだオープンしていないので、手持ち無沙汰だ。わたしたちは、まずネイバという町の空港に行く予定だったので、ネイバ行きの便のゲートを聞き、その待合室に座って出発時間が来るのを待つことにした。
「わたし、この空港から日本へ行ったの」
エバが空港の待合室を眺めながら、ポツリと言った。
「一人で行ったのか」
「ノー。おばさん。それと小さい子供一人」
「お姉さんじゃなくって?」
「そう関係ない人。わたしを日本に連れて行ってくれたの。子供はカモフラージュね。あと、わたし、一番きれいなドレスを着て行った。汚い服だと、お金持ちのツーリストに見えないでしょ。わたし、飛行機乗ったの初めてだった。怖かった。今でも怖い。コロンビアに帰ってから、飛行機は一度も乗ってない」
生まれて初めて乗った飛行機が、なんと売春のために日本に行くためだったとは。そして、入管に疑われないように、精一杯着飾って乗ったとは。そのときの不安な彼女の気持ちを思うと、胸が締め付けられるようだった。
六時近くになっても、いっこうに登場案内のアナウンスは流れなかった。搭乗ゲートを間違えたのではないかと不安になって、エバに確かめるように言った。エバは近くの係員らしい女性に尋ねたが、やはりここで間違いないらしい。
「出発が遅れているらしいの」
遅れるのなら、その旨のアナウンスがあってもいいはずだが、エバは聞いていない。いかにも万事についてルーズなコロンビアらしかった。
結局、七時ころになって、ようやく搭乗ゲートが開いて飛行機に乗りこんだ。飛行機は、左右二席ずつの中型機だった。定員も七、八十人くらいだろう。観光地に行く便ではないので、このくらいで十分なのだろうが、早朝の便なのに席はほぼ満席だった。
ネイバまでは約一時間のフライトなので、ドリンクサービスが出たころには、もう機体が降下し始めていた。わたしは窓際に座っていたが、通路側にいたエバに、通路を挟んだ席に座っていた若い男が声をかけて話していた。エバも楽しげに話している。わたしという男が隣にいながら、なんて軽い女だと思ったが、ラティーナなんてこんなものだと割り切らないと、付き合いきれないのは十分過ぎるほど分かっていた。
おそらくわたしがコロンビア人だったら、「わたしの女にちょっかい出しやがって」と喧嘩になっただろう。実際、新宿あたりのコロンビア系ディスコでは、女の取り合いで流血事件がしょっちゅう起こっている。ただ、日本人が巻き込まれるケースは少ない。いくら酒が入って血が上っていても、日本人を怪我させると警察の介入を招いてヤバイと分かっているのと、日本人は女にちょっかい出されてもコロンビア人やイラン人のように怒らないからだ。
新著「体験ルポ 在日外国人女性のセックス」(光文社刊)好評発売中。
「サイバーセックス日記」http://demachiryuji.seesaa.net/
「洋楽カラオケ日記」
http://ameblo.jp/demachiryuji/
「裏ストリップ30年回顧録」
http://arecho.blog98.fc2.com/