[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
しばらく歩くと、美容院や床屋ばかりが集まっている地域があった。日本でも青山あたりは美容院の密度が高いらしいが、それでも隣近所みんな美容院ということはない。秋葉原のように電気街ならともかく、美容院や床屋は離れ離れに存在したほうが、営業的にはいいのではと思ったが、これがコロンビア流なのだろう。
エバが、そのうちのひとつの店の前で立ち止まって言った。
「リュージ。わたしの誕生日、昨日でしょ。だから、ヘア、きれいにしたい。いいでしょ」
「えっ、だって、時間ないよ」
「だいじょうぶ。セットだけ」
「でも、セットなんて髪の毛洗ったら、それで終わりでしょ。一日しかもたないよ」「でも、わたし、誕生日。きれいにしたい」
「いくらなの」
「六千ペソ。安い。安い」
「しょうがないなあ」
エバはうきうきしている。彼女が髪の毛をセットしてもらっている間、わたしは店の入り口のソファで、置いてあるヘアカタログ雑誌やファッション雑誌を見ながら、じっと待っていた。美容院で大の男が座っているなんて、恥ずかしいったらなかった。整形クリニックに行ったときのような恥ずかしさだ。幸い他の女性客がいなかったのが不幸中の幸いだった。
美容師は四十歳くらいの、人の良さそうなオバさんだった。日本の美容院のような小奇麗さはない。田舎のパーマ屋といった感じだ。セットは二十分くらいで終わった。
「リュージ。見て。きれい?」
「ああ、きれい、きれい。だから、早く行こう」
「あなた、冷たいね。ちょっと待って。ここにシャンプー売ってる。これ買って」
「え、シャンプーなんてどこでも売ってるだろ。ここじゃなくても。いくらなの」
「六千ペソ」
「それじゃ、日本より高いじゃないか。日本でも、スーパーマーケットなら二百円とか三百円だぞ」
「でも、これ、いいシャンプー。欲しい。わたし、誕生日でしょ」
「しょうがないなあ」
日本の美容院や理髪店でも、シャンプーや整髪料を売っている。だが、それらは中身がどうかは知らないが、プロ用というブランド品なのか、割高だ。しかし、エバの「誕生日」という押しに押されて、わたしは仕方なく合計一万二千ペソ支払った。エバはドライヤーでセットしてもらって、ウキウキしている。どこの女でも、きれいになるというのには弱いのだ。
「リュージも頭カットしたら。頭の毛、長くなっているでしょ。ここ、安いよ」
「いいよ。どんな頭にされるか分からないし」
わたしは日本では、いつも行き付けの理髪店で頭をカットしてもらっていた。普通の理髪店は、何人もの理容師がいて、普通は美容院のように「指名」が効かない。いつも理容師が替わると、いちいち「こういうふうにカットしてくれ」と指図しなくてはならない。それで、一人で店をやっているなじみの理髪店を利用していた。「いつものように」とひとこと言うだけで済んでいたからだ。
だが、こんな田舎町の、しかも言葉の満足に通じない理髪店でカットしてもらったら、コロンビアーノに多いGIカット風にされてしまう怖れが充分にあった。
新著「体験ルポ 在日外国人女性のセックス」(光文社刊)好評発売中。
「サイバーセックス日記」http://demachiryuji.seesaa.net/
「洋楽カラオケ日記」
http://ameblo.jp/demachiryuji/
「裏ストリップ30年回顧録」
http://arecho.blog98.fc2.com/