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「大阪のイミグレーションのモンキーハウス、お化けが出るの。夜、みんなが寝てると、女の歌が聞こえるの」
「本当かよ。誰かが歌ってたんじゃないのか」
「ノー、ノー。誰も歌ってない。だから、みんな、“怖い、怖い”と言った。看守さんに言ったけど、信じてくれなかった」
大阪の入管の施設は、彼女が収容されたときはできたばかりだった。本当に幽霊が出るとしたら、そこは何かいわくつきの土地だったのだろうか。
「エバには、よくお化けに縁があるなあ。ほら、W市のホテルでも一回あったろ。覚えてる?」
「うん、覚えてる。怖かった」
エバには何度か幽霊にまつわる因縁があった。彼女を仕事先のW市の劇場に送っていくため、前夜、W市のラブホテルに泊まったときのことである。一戦を終え、ビールを飲んで眠り込むと、明け方うなされて目が覚めた。目を開けると天井のシャンデリアがエバの顔になっていた。「えっ?」という感じで目を凝らすと、それが突然、怪物の顔に変わった。
「わっ!」という叫び声をあげると、同時にエバもいっしょに飛び起きた。エバに事情を話すと、「わたしも同じ夢を見た」という。彼女は天井にわたしの顔が浮かび、それが怪物に変わったのだという。何ということか。二人同時に、同じ夢を見たのだ。
「エバ、たぶん、ここで前にサンタマリア(殺し)があったのかもしれないよ。だから、お化けが出るのかも」
と言うと、エバは青ざめた顔で言った。
「リュージ、ここ、怖い。ホテル、チェンジする」
「ノー。大丈夫。面倒くさい。あと、三時間だけ。我慢する」
すでに五時ころになっていた。ホテルを変われば、また泊り料金がかかる。頻繁に彼女と会っていたときだったから、そんな余裕はなかった。それにしても、二人いっしょに同じ夢を見るというのは、幽霊の有無はともかく、エバとは一心同体であった証拠だった。
「S市の劇場の楽屋でもあったよ。夜中に、壁がカリカリ音がするの。だから、みんな朝まで寝れなかった」
「それはミッキーマウス(ネズミだろ)」
「ノー、ミッキーマウスじゃない。ほんと、あそこ怖い。だから、みんな寝ずに新幹線で仕事行った」
S市は東北地方の都市である。東北だと遠くて迎えに行けないから、彼女たちは移動の朝は始発の新幹線などを使って、それぞれの仕事先に散っていった。関東に戻ってくるときは、駅に迎えに行き、そこから仕事先に送っていったりしたのだ。
「ああ、また思い出した。怖い。その話、もういい」
S市の劇場には、一度だけ行ったことがあった。仕事が「ロング」(延長)になって、しばらく東京に戻れない、会いたいから来てくれとと言われ、東北道を五時間走って行ったのだ。といっても、中には入っていない。仕事が終わるのも外で待っていて落ち合ったのだ。
本当は外出禁止のところだったが、彼女は従業員たちが帰ったあと、こっそり抜け出してきた。だから、中の様子は分からないが、建物が古いことは確かだった。昔知っていた女が、この劇場の楽屋はネズミが出るから嫌いだと言っていたので、実際にはネズミを勘違いしたのではないかと思うのだが。
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