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エバが逮捕されたのは、晩秋のある日だった。私とエバの関係を知っていた男から電話がかかってきた。詳しいことは分からないが、羽田空港で逮捕されたらしいということだった。
そのころは、エバとはまったく音信不通の状態で、どこにいるのか分からなかった。もう彼女のことは諦めていたが、最後にひとめだけ会って、別れを言いたかった。どうしていいのか分からず、わたしはその足で新宿のコロンビアレストランのママに相談に行った。
「俺の前の恋人が捕まったらしいんだけど、どうしたらいいんだろう」
「どこで捕まったの」
「よく分からないんだけど、羽田空港らしい」
「じゃ、警察か十条の入管ね。チケットは持っているの」
「持っていると思う」
この数ヶ月前、エバと食事だけしたことがあった。そのとき、今年中に帰国するつもりで、帰りのチケットを買ったと聞いていた。十三万円だと言っていたから、おそらく自分で買ったものではなく、パトロンのうちのひとりに買ってもらったのだろう。
コロンビアーナたち不法滞在者は、帰国したくなると、事前に帰国用の片道チケットを買っておく。万一捕まっても、チケットさえ持っていれば、すんなり帰れる。だが、チケットを買う現金を持っていないと、誰かが差し入れてくれるまで足止めを食う。チケットさえ所持していれば、現金は数万円くらい持っていればいいから、オープンのチケットを買っておいて、いつ捕まってもいいように準備しておくのだ。
東京なら、十条の入管近くに旅行代理店が二つあり、ほとんどの不法滞在の外国人がここを利用していた。たいていの言語に対応できるよう、フィリピンやタイ、中国、イラン、ペルー出身のスタッフを揃えていた。
サリーもここでチケットを買った。そのとき、「わたしの分も買って」とエバにねだられた。関係がギクシャクしていたときだったから、「金がない」と言って断った。十三万円もの金を、しまり屋のエバが自分で払うわけがないから、金持ちのパトロンに買ってもらったと思ったのだ。
「いつ捕まったの」
ママがわたしに尋ねた。
「一日だと思う」
「今日は四日ね。チケットを持っているなら、一週間くらいで帰るかもしれないね」
「じゃ、あと三、四日か。困ったな。俺、あさってから海外出張なんだ。四日は戻って来れない。どうしたらいいんだろう」
「あなた、彼女の本名を知ってるんでしょ」
「知ってる」
「それじゃ、電話で問い合わせたら」
「出来るの?」
「分からないけど、やってみないと」
「もう時間がないんだ。とりあえず、あした十条の入管に行ってみる」
本当に十条の入管に収容されているのかは分からない。どこかの警察かもしれない。もっと確実な情報を知りたかったわたしは、エバと親しかったクラウディアなら知っているのではないかと、クラウディアの居所をあちこちに聞いて探した。
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