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麓の駅に着くと、エバが「どこへ行く」と尋ねた。
「うーん、そうだな。ボリーバル邸(Quinta de Bolivar)がここから近いから、そこに行きたい」
「オーケー」
ボリーバル邸とは、グランコロンビア(現在のコロンビア、ベネズエラ、パナマ。のちに分裂)が千八百二十年にスペインから独立する際、先頭に立って闘った「独立の父」シモン・ボリーバルに対して、その功績を称えて贈られた白亜の豪邸だ。現在は資料館になっているとガイドブックに書いてあった。地図を見ても、一キロほどの距離だ。歩いて行ける距離なので、行ってみようと思ったのだ。
ところが、エバは「危ないからタクシーで行く」と言う。付けていたタクシーに乗り込んだが、タクシーの運転手も行き先がボリーバル邸と聞いて、不機嫌になった。だが、そんなことを気にするまもなくボリーバル邸に着いた。
入り口にはライフル銃を持った兵隊が立っていた。たしかに日本でいう重要文化財なのだろうが、銃で守らなければならないほどのものなのだろうか。それとも、それだけ治安の悪さを物語っているのだろうか。
資料館には、ボリーバルの自筆の書簡などが展示されていたが、もちろん何が書いてあるのかさっぱり分からない。ざっと流して見て、庭に出た。コロニアル風の庭園だ。とくに広くはない。五分ほどで見て回れる程度の広さだった。
二人で散策していると、バックパックスタイルの東洋人の青年と出会った。帰りのロープウエーの中にいた青年だった。そのときは、中国人か韓国人だとばかり思っていたので声もかけなかったが、わたしたちと再び会ったことで挨拶すると、「日本人ですか」と聞いてきたので彼も日本人だと分かった。向こうもこんなところに日本人が単独でいるなんて思ってもいなかったという。
出口に向かいながら話をしてみると、何ヶ月もかけて南米を一周するつもりらしい。ボリーバル邸の外に出たところで、彼にこれからどこに行くつもりなのかと聞くと、「うーん、ちょっとボゴタ市内を回ってみるつもりです」と言い残して去っていった。お茶でもいっしょに飲んで、少し話しでも聞きたいという気はあったのだが、わたしたちがアベックなので、彼も気を利かしたのかもしれない。
わたしたちがあんまりあっさり別れてしまったので、エバが「あなた、どうして彼と今日、いっしょにどこかに行かないの」と不満そうに言った。どうやら彼をわたしに押し付けて、フリーになりたい様子が見て取れた。そんなにわたしが邪魔なのかと、また腹が立ってきた。
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