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二週間後、わたしは再びM市を訪れた。サリーの要望は一応彼女に伝え、その決断は彼女に任せると言った。それ以来、二週間ごとに彼女のもとを訪れた。裁判の予定はいっこうに決まらなかった。弁護士さえ、なかなか決まらなかった。
いろいろ聞いてみると、彼女のようなケースはおそらく一回の公判で判決が出て、即刻入管に送られて強制送還するだろうと言われた。それなら私選弁護人を付けなくても、国選弁護人で間に合うはずだった。だが、一ヶ月以上たっても国選弁護人が決まったという話はないらしい。
友人の弁護士に相談してみると、どうせ一回で判決が出るだろうから、ただで引き受けても言いといってくれた。しかし、裁判の前に一回、判決の日にも行かなくてはならないから、二~三回M市に行く交通費だけは負担してくれと言う。約二十万円はかかりそうだった。
エバが恐れていたのは、強制送還にならずに実刑をくらって、判決後も何ヵ月も刑務所で暮らすことだった。
「私選弁護士を付けたら、絶対にわたしはコロンビアに帰れるの」
エバはわたしに尋ねた。
「いや、それは分からない。たぶん帰れるとは思うけど、こればかりは判決が出ないと分からないよ。私選にしても、国選にしても、たいして変わりはないと思う。ただ、俺の友だちだから、安心できるけど」
国選だったら、俺の知らない人だから、きちんとやってくれるかどうか分からない。なにせ国選弁護士というのは、国から支払われる弁護士報酬は五万円に過ぎないという。ただでさえ刑事事件は民事に比べて安いのに、これでは割に合わないからなり手がいない。だから当番制にしているそうだ。いわゆる「人権派」の弁護士に当たったらいいが、手を抜かれてエバが実刑を食らったらかわいそうなので、万一のことを思って私選にしようかと思ったのだ。
「エバ。俺の友だちの弁護士、ただでやってもいいと言ってる。でも、飛行機のお金は払わないとダメだ。払えるか、二十万円。俺が払ってもいいけど、そうすると、俺はもうここには来れない。二人もここに来たら、すごくお金がかかるからな。どうする?」
エバはしばらく沈黙してから言った。
「いらない。国選でいい。だから、あなたここに来て」
わたしに会いたいから私選弁護士を断ったんだろうと言いたいところだが、本当は二十万円を払うのが嫌だったんだろうと思う。三百五十万円持っているのだから、それくらいいいのではないかと日本人のわたしなどは思うのだが、コロンビアに帰れば半年以上は暮らせる大金だ。確実に強制送還されるという保証がない以上、彼女がケチったのも無理はなかった。わたしも彼女が麻薬所持などの余罪がない限り、通例は有罪判決のあと強制送還されるだろうと聞いていたから、無理強いはしなかった。
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