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「エバ、しもやけは治ったか」
「治った。もう大丈夫」
彼女は手を見せてくれた。傷痕は残っていなかった。エバが約二ヶ月間収容されていたM刑務所(ここには独立の拘置所がなく、刑務所が拘置所を兼ねていた)には暖房設備がなかった。これが寒い北国の刑務所だったら、さすがにストーブやスチームくらい入れてあるのだろうが、そこは比較的温暖な気候の地域だったから、暖房設備は必要ないと考えているのか。だが、いくら暖かい地方だといっても、真冬の寒さは南国生まれの彼女にはこたえた。彼女の両手は赤くパンパンに腫れ上がり、いくら薬をつけても治らなかった。
ところが、裁判が終わり、大阪の入管に送られるとたちまち治ってしまった。大阪の茨木市にある入管の収容所は、まだできて数ヶ月の新しい施設だった。もちろん暖房もきちんとされていた。下手な薬より、暖房が彼女にとって万能の治療薬だった。
「リュージ。これ見て」
エバはノートを出してきた。見ると、ひらがなを練習していた。最初のところに日本人が書いたと思われる見本が書いてあり、彼女の名前もひらがな、カタカナで練習してあった。
「これ、モンキーハウス(拘置所)のお姉さんが書いてくれた。わたし、モンキーハウスにいるときヒマ。だから日本語勉強していた」
「ふーん。同じ部屋に何人いたの」
「三人。これ書いてくれたお姉さん、かわいそう。彼女のだんなさん、彼女がモンキーハウスにいるとき、死んだ。彼女、ワーワー泣いた」
「どうして死んだの」
「心臓悪かったみたい」
「彼女、どうして捕まったの」
「クスリ。だんなさんも一緒に捕まった」
「じゃ、だんなさんもモンキーハウスで死んだんだ」
「そう」
「彼女は何歳。だんなさんは何歳」
「たぶん、二十五歳くらい。だんなさんは五十歳くらい」
二十五歳も年が離れているし、覚醒剤か何かで逮捕されたということを考えると、二人は堅気の仕事ではなかっただろう。おそらくやくざとその情婦といった関係か。わたしたち堅気の世界の人間からすれば、ちょっと不自然なカップルでも、ちゃんと愛情で結ばれているのだなという感慨を抱いた。
エバは性格的には他のコロンビアーナに比べたらずっとおとなしく、日本人の女に近い部分があった。だから刑務所という特殊な空間の中でも他人とうまくやっていけたのだろう。
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