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リリアナ一家はみんな家にいた。リリアナの七歳の娘は、わたしが前回持っていったお土産のTシャツを着ていた。日本の絵柄のTシャツを着ていると、一族にジャパゆきさんがいるのが分かってしまうと、敬遠されるのではないかと思っていたが、そんな心配はいらないようだった。だが、無職の旦那だけは日本人のわたしに抵抗があるらしく、知らないうちに出ていってしまった。
「リュージ、子供、かわいそう」
エバが、リリアナの生まれて五ヶ月の赤ちゃんを抱き上げながら言った。リリアナは、エバが逮捕されたとき、ちょうど産休で会社を休んでいた。リリアナの家には電話がなかったので、会社の同僚経由でエバの逮捕や強制送還の時期について、逐一伝えていたのだ。
「子供ね、喉が悪いの。生まれてからずっと」
気管支炎か喘息らしかった。リリアナは、子供の病気の看病が大変で、仕事も休みがちなのだという。それなのに、相変わらず無職の亭主はぐうたれていた。妻が働いている間、赤ちゃんの面倒を見ているのかもしれないが、ヒモ亭主であることに変わりはなかった。
「さっきね、リュージと日本レストランに行って食べてたの」
エバがリリアナに言った。
「リュージ、お土産、お姉さんにプレゼント、いいでしょ」
「ああ、いいよ」
わたしはバッグの中からパック詰めされたお弁当の残りを取り出した。エバはスペイン語で、「これは何、あれは何」と説明し始めた。リリアナと娘が「キャー」と言いながら笑っている。二人は、お弁当のおかずに手をつけようとしたのを止めてしまった。
「何言ってんだ」と聞くと、「わたしね、日本人は蛙とか蛇を食べるの。だから、この鳥のから揚げは蛙のから揚げでと言って説明したの。そしたら、そんなの嫌だって」
「バカヤロ。それは嘘。嘘」
と、説明したが、エバの話の方を信じたのか、まったく手を付けようとしなかった。わたしたちが帰ったあと、恐る恐る食べるのだろう。放っておくしかないなと思って、そのままにした。
エバが「明日、早いから帰る」と言い、二十分ほどでリリアナの家を出た。今日は何も買い物をさせられないかな、と思っていたら、やっぱり近所の食料品店に寄り、二千円分ほどの食料品を買いこんだ。もちろん、代金はわたしが払う羽目になった。
リリアナたちに見送られ、バス停まで来た。バスが来るまで十分ほど待った。タクシーが通りかかれば乗ろうと思ったが、やはり流しのタクシーは通らなかった。
「気をつけてね」と言うリリアナの言葉に見送られて、わたしたちはバスに乗った。幸いチンピラ風の男たちは乗っていなかったが、用心のため、運転手の近くの席に二人で座った。
前回と同じように終点のショッピングセンターでバスを降り、タクシーに乗り換えてエバのアパートに戻った。
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