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「リュージ。わたし、いま本当にリラックス。コロンビアに帰って初めてリラックスした。分かる?」
「ああ、分かるよ」
エバは目を瞑って、心地よさそうにしていた。だが、その静寂もすぐに押し売りによって破られた。まずやって来たのは二人連れの三つ編み屋の女だった。二人とも黒人だった。
このカルタヘナは、コロンビアでも一番黒人の多い地域だ。スペインの植民地だったころ、港町の労働力を確保するため、アフリカから多数の黒人が連れて来られた。彼らはその子孫だ。南米は人種の坩堝と言われるが、実際には地域によって黒人、白人、インディオの混血度はまちまちだ。
コロンビアでも、経済・政治の実権を握るハイソサエティは純粋のスペイン系の血を保っているし、逆に貧しい地域に行けば行くほど黒人やインディオの血が濃くなる。ここカルタヘナには、褐色どころか、真っ黒な肌をした黒人もいた。二人の三つ編み屋も、真っ黒な部類に入った。
三つ編みといっても、レゲエの黒人のように細かく編むのである。わたしたちは押し売りを断った。ぶつぶつ言いながら、二人は去って行った。すると、すぐに別の押し売りがやって来た。今度は貝殻で作ったアクセサリーを買えと言うのだ。今度も断った。
写真屋もやって来たが、わたしたちはカメラを持っていたので諦めた。すると、今度は牡蠣売りがやって来た。牡蠣といっても、日本のような大きな牡蠣ではなく、蜆みたいに小さい。それが何十個も密集して塊になっている。
押し売りの男が、「これを食べれば精がつくぜ」という仕草をした。精がつくというのはどうでもよかったが、わたしはこんな小さな牡蠣が、どんな味がするのかに興味を持った。
「いくらなの」
「五百ペソ」
男はわたしが「オーケー」と言うのを待たずに、牡蠣をナイフでこじ開け、レモンをかけてわたしの目の前に突き出した。一個食べてみた。小粒だが、けっこうおいしかった。
すると、男は次から次へと牡蠣をこじ開け、わたしの口に持ってきた。十個くらい食べたところで、もう充分だと思い、「ノー、グラシアス」と言った。だが、男はわたしの言ったことが耳に入らないかのように、また次から次へと牡蠣を剥いて突き出した。
さらに十個ほど食べたところで、わたしはまた「ノー、グラシアス」と言ったが、また無視された。剥いてしまった以上、食べるしかない。牡蠣は小さいから、満腹で食べられないということはないが、もううんざりだった。わたしはエバに、男に牡蠣をもう剥かないようにと、助け舟を求めた。
エバが強く言ったおかげで、男はようやく剥くのをやめた。勘定をしてもらうと、一万四千ペソだという。意外な高さに驚いて抗議すると、男は剥いた貝殻を並べ、数え始めた。そして、二十八個あるのをわたしに確認させ、「一個五百ペソだから、一万四千ペソなんだ」と説明した。
わたしは五個くらいのセットで五百ペソだと勝手に思っていた。確認しなかったわたしがバカだった。観光地では、ぼられるのが当たり前。だが、現地人のエバがいることで、つい気を緩めてしまったのだ。
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