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翌朝早く、エバは「お義兄さんとアパートを探しに行く。お昼過ぎには帰る」と言い残して出ていった。ゆっくり十一時ごろ起き出したわたしは、自分で目玉焼きとトースト、インスタントコーヒーを作って朝食をとった。
ソファに横になってスペイン語の勉強をしていると、十二時半ごろエバが戻ってきた。
「エバ、アパートはどうした。買うの?」
「ノー。まだ」
あまり話したがらない。本当に義兄と会っていたのか、それとも義兄と何かトラブルがあったのか。理由は分からないが、エバの機嫌が悪いことは確かだった。
「リュージ、あなた、お腹空いた?」
「ちょっとね」
「じゃ、食べに行く?」
「うん。でも、また日本に電話したいんだけど。仕事のことで」
「オーケー。あとでテレコン、行く」
わたしたちはアパートの近所にあるチャイニーズレストランに歩いて行った。二日目にエバが行こうと言っていたのはここだったらしい。こじんまりとした庶民的な造りの店だったが、客は一人もいなかった。わたしたちはチャーハンとエバのお勧めの春巻き、そしてジュースを注文した。春巻きは、日本の中華料理のものとは違って、かなり小さかった。一口大だった。
これを、オレンジ色をした少し辛いタレをつけて食べた。コロンビア風に変化した中華料理のような気がしたが、それはそれでけっこういけた。チャーハンも、パサパサとした長粒米を使っているためか、日本のものよりうまかった。
「リュージ、わたし、前ね。このお店の前でバスを待ってたら、二人組のドロボウに襲われかけたの。ゴールドのネックレスをしてたから、それを狙われたの。慌ててこの店に逃げ込んで、助けてもらったのよ」
「ふーん。でも、ここノルテだろ。スール(南のスラム地区)だったら分かるけど、ここにもドロボウがいるのか」
「いるいる。いつも二人組の男たちが歩いてる。有名。だからわたし、もうコロンビアではネックレスや時計しない。もう二回狙われた」
日本人などの観光客が狙われるというのなら分かるが、エバはここに住んでいる現地人だ。そんな一般人まで狙われるというところにコロンビアの恐ろしさを感じた。
ある自称「軍事評論家」がコロンビアのコカインマフィアに接触するために潜入したという本を以前に読んだことがあったが、実にお粗末なものだった。
数年前に警察に射殺されたメデジンカルテルの大ボス、エスコバルあたりと接触したのかと期待して読み進んだのだが、結局、マフィアと名乗る幹部に農園に案内されたというだけ。ホテルの突然の停電まで対立するマフィアが仕掛けたのではないかと書いている、何から何まで被害妄想的な内容の本だった。
チンケな日本人が一度くらい来たとしても、そんな大組織が相手になどするものか。おそらくガイド付きで観光旅行に来ただけで、たくましい空想力でストーリーを作ったのだろう。
コロンビアに来る前、新宿にいたあるコロンビアーナはこう言っていた。
「わたしたちでもコロンビアに帰ったばかりのころは怖いのよ。日本の安全さに慣れてしまってるでしょ。でも、しばらくすると慣れてしまうけど」
金持ちが狙われるのはもちろんだが、コロンビアの本当の恐ろしさは、誰彼かまわず日常的かつ身近に「暴力」が存在することなのだ。
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