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七時ころ、ようやくインターフォンが鳴った。下の守衛からだろう。インターフォンを切ってから、エバが言った。
「友だちが来た。わたし、行く。あなた、どうする。どこかに行く?」
コロンビアに来たばかりで、まだ右も左も分からないし、もう夜になっている。一人歩きは危ない。それに時差ぼけで無性に眠たかった。
「ここにいる」
「そう。あなた、テレビ見てる。オーケー?」
エバはベッドルームにあるテレビのスイッチを点けながら言った。
「じゃ、行って来るね。リュージ」
「何時に帰るの」
「九時」
エバが出て行き、わたしは彼女の部屋にひとり取り残された。テレビのリモコンをカチャカチャやってみたが、三チャンネルあるだけだった。それもあまり映りがよくない。わたしのスペイン語能力では、何を言ってるのか、さっぱり分からなかった。
しかし、その国の文化を知るには、テレビは格好の材料だ。ドラマが多いのか、ニュースが多いのか。それともバラエティが多いのか。CMにはどういうパターンが多いのか。眺めているだけでも、いろいろなことが分かってくる。
CMはアメリカのものと雰囲気は変わらなかったし、演出力も普通だ。かつての日本のローカル局のCMのように、静止画像にナレーションだけというような単純なものはなかった。
東南アジアに行くと、日本のアニメを現地語で吹き替えて放送しているのをよく見る。日本のアニメの質の高さが評価されているわけだが、さすがに地球の裏側のコロンビアでは放送されていないようだった。
では、イランやタイ、中国など、世界何十カ国かで放送されたという、あの「おしん」はコロンビアで放送されたのだろうか。彼女たちに直接尋ねたことはなかったが、少なくとも彼女たちから「コロンビアで『おしん』を見た。感動した」という言葉を聞いたことはなかった。
放送されていたのなら、一度くらい話題に上ってもいい。もし放送されていたら、彼女たちコロンビアーナの日本に対する見方が変ってきていてもいいからだ。
コロンビアーナたちは、一様に日本人がみんな金持ちだと思っている。確かに日本自体はバブルがはじけたとはいえ、いぜん金持ち国家だろう。しかし、普通のサラリーマンは、家のローンや家族を養うのに汲々としていて、わずかな飲み代を捻出するのにも苦労している。
ところが、それをいくら説明しても、彼女たちには分からない。いや、わざと分かろうとしないのか。
彼女たちコロンビアーナたちと頻繁に接触できるのは、自分の金をある程度自由にできる自営業か自由業、あるいはヤクザ屋さんたち、ごく一部の男だけだ。ショート三万円の女とデートするなんて、一ヶ月数万円の小遣いで我慢している大多数のサラリーマンは、年に二回のボーナスのときくらいしかできないだろう。
そんなビンボーなサラリーマンでも、いざデートのときになると、女の子にねだられてチップをはずんでしまう。欧米人のように、タイやフィリピンのゴーゴーバーで、ビール一本で何時間もかけて好みの女の子を探すなんて芸当は、日本人には逆さになってもできない。だから、日本人はみんな金持ちだと思い込んでしまう。
コロンビアーナに限らず、日本に出稼ぎに来ている女たちは、日本がわずか数十年前まで、彼女たちの国以上に貧乏だったことを知らない。「からゆきさん」に代表されるように、むしろ日本の女が東南アジアに「売春出稼ぎ」に行っていたのだが、そんな事を言っても嘘つきだと言われてしまうのがオチだ。
コロンビアで「おしん」でも放送してくれれば、わたしの説明に納得してくれて、日本人を金儲けの対象としか見ない彼女たちの意識とのギャップも埋まるのではないかと思うのだが…。
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