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「エバ、前に新宿の焼き肉屋で言ったことがあるだろ。日本も昔は貧乏だった。八十年、九十年前ね。そのころはフィリピンやマレーシアより貧乏だった。だから、日本の九州の女、フィリピンやマレーシアに行った。あなたたちと同じ、プータ(売春婦)の仕事。“からゆきさん”と言った。映画にもなってるよ。『サンダカン八番娼館』という映画。でも、日本人の男はそのお金で機械買った。それで仕事、一生懸命した。だから、だんだん日本は豊かになった。でも、コロンビアの男は怠け者。それ、だめ。分かる?」
「……分かる」
“からゆきさん”たちの送金が日本を豊かにしたというのは、いかにも乱暴な話だ。自分でも分かっていた。戦後の復興などは“朝鮮戦争特需”などが寄与しただろうし、もともと江戸時代からの儒教の影響による日本人の勤勉さも大きな要素をしめているだろう。からゆきさんたちが日本に送った金は、現在のコロンビアと同じように、家族に食い散らかされてしまっただけかもしれない。
コロンビアでも、女たちからの送金で、そのファミリーは住居や食料には困らなくなったろう。だが、それにとどまっている。わたしは彼女たちが体を張って稼いだ金を、コロンビアーノたちが空費しているのに我慢がならなかった。だから、あえて誇張して言ったのだ。
しかし、コロンビアはコカインマフィアが人気の国だ。政府が無策無能なのに対して、コカインマフィアはアメリカなどへコカインを密輸して得た金の一部で住宅や学校を建て、貧しい人たちに提供している。
「日本のマフィアは女から金取るだけ。コロンビアのマフィア、プレゼントしてくれる。悪くない」。
こんな話を何人のコロンビアーナから聞いたことか。
結局、「金を持っているやつが、持っていないやつに分け与えることはいいことだ」という「キリスト教的世界観」が彼らの根底にあるのだろうか。だから、それが大義名分となって、売春でだろうが何によってであれ、「金持ち」の日本人から金をふんだくることに抵抗がないのだろうか。
エバには、彼女が日本にいるとき、何度も日本人すべてが金持ちではないと説明した。
「日本のサラリー、高い。でもアパートも高い。食べ物も高い。何でも高い。だから、日本人の普通の男、自分のお金、一ヶ月に五万円くらいだよ。それで、どうしていっぱい遊びできる? どうしていっぱいプレゼントできる?」
「でも、日本、お金持ち。わたし、日本のあちこち行った。どこもきれい。コロンビアと違う」
「そんなことない。エバが行ったのは、日本でも一部だけ。あなた全部見てない。日本でも、田舎に行けばトイレが水洗じゃないところもある。わたしの家だって、高校生のときまで水洗じゃなかった。トイレ、ものすごく臭かった」
たしかにエバは、けっこう片田舎のスナックにも仕事で行ったことがある。それで日本のすべてを知った気になっているのだ。だが、日本の地方都市が同質化してきたのは、せいぜい十五年くらい前だろう。
また、彼女が知っている日本人は、彼女の「お客さん」だけである。遊ぶつもりで来ているのだから金離れはいいのも当然だ。しかし、大多数のサラリーマンは、仕事が終われば家庭に真っ直ぐ帰るか、居酒屋でちょっと一杯やるのが関の山だ。そういう大多数の日本人を彼女は知らない。
わたしはコロンビアから帰ったあと、映画「サンダカン八番娼館」のビデオをダビングし、エバのもとへ送った。日本だって、かつては現在のコロンビア以上に悲惨な状態だったということを本当に理解してもらいたかったからだ。
だが、しばらくしてエバのところに電話して、ビデオを見たかと聞くと「日本語、分からない」の一言で片づけられてしまった。はなから見るつもりはなかったのだろう。彼女にとって、過去の日本が貧しかったことはどうでもよく、金があふれているように見える現在の日本だけが重要なのだ。
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